初日の京都ラグも盛況のうちに終わり、ほっとしているところです。書き込みにも触れましたが、僕個人としては悔いが残るところがありました。
でも、悔いが残らないライブなんて無いんじゃないでしょうか?
まあ、何回かに一回くらいはそういう日もありますが、それは奇跡的ともいえます。ほとんどの場合、例えば演奏の感想を聞かれたとしても、 「大体は良かったけど、あそこがなぁ」って感想になってしまいます。
しかし、その納得のできなさが、明日への進歩を生むんだと思います。もちろんちゃんと「だめ」だったと感じる部分の修正をしていれば、という条件付きですが。
今日の名古屋はどうでしょうか? ちゃんと修正できるかな? そのためにも問題点をきっちり整理しておかないとね。

こんなことをいつも演奏後には考えているんですよ。

僕はスポーツが大好きです。無類のサッカーファンだということは、ご存じの方も多いと思います。
でも野球も本当に好きです。1988年の10月19日、知る人ぞ知る、あの川崎球場での近鉄-ロッテ戦の、まさにその現場にいたんですから!
見ず知らずのまわりのおっさん(近鉄ファンにはおっさんしかいなかった!)と、抱き合って涙したあの日は、生涯忘れません。僕にとっては、ドーハの悲劇に匹敵する試合でした。
相撲も(弱かった頃の千代の富士がいいなぁ)ラグビーも(平尾・大八木時代の同大・神戸製鋼がお気に入りです)何でも好きです。
なぜ急にスポーツの話を出したかというと、トップで活躍する人たちの話の中には、必ずといっていいほど、楽器を、そして音楽を向上させるのに参考になるような意見が満載されているからです。
例えばイチローの言葉で最も気に入っているものをひとつ――あるインタビューで「どうすればイチロー選手のようになれますか?」という問いに、「少なくとも野球でお金を稼ごうなんて思っていたら、イチローにはなれないですね」だって!
かっこよすぎません?!

スポーツの試合では、相手はこちらの失敗や弱点を攻めてきます。
例えば昨日のような、自分自身の演奏で悔いの残るような部分は、必ず次の時までに修正していかないと、スポーツの場合、そこを攻められて負けてしまうんですよね。
そのための対策とか思考のしかたに関する話は、実際自分がそうするための本当にいいアドバイスになります。
僕は自分をアスリート系ミュージシャンと思っています。
実はこのタイプ、ジャズやフュージョン系にはかなり多いタイプです。負けず嫌いで、練習の虫ってミュージシャンですね。
ただこれが過ぎると、聴いてくれている聴衆のことなんかほったらかし、自分の世界だけにひたすら没頭する、いわゆる楽器オタクになってしまいます。
ここのバランスが本当に難しい。ここは本当に悩むところです。
もちろん自分が納得していない音なんか出せませんが、それがどれだけの人に分かってもらえているのか。
自分がやっていることは理解され、共感を得られているんだろうか。
さらには楽器がうまいってことはどういうことなんだろうってね。

「こんな納浩一に食えないと言わしめるこの日本の音楽シーンとは」と書き込んでくれた方がいました。
確かに今売れているという音楽の多くには、はっきりいって納得できないものが多いです。
ただそれをシーンのせいだけにはできない。シーンのせいにしてしまうと、自分とシーンの距離がどんどん離れていってしまいますからね。
今はジャズシーンにも若くて人気のある人が出てきて、活気が出てきましたが、数年前は本当に低迷していたような気がします。
それはきっと多くのジャズに関わる人たちが、ジャズが低迷しているのは聴衆に聞く耳がないから、日本の音楽シーンがだめだからと切り捨てていたからのように思います。
もしそうだとしたら、それを打開するために、 そういった聴衆やシーンの耳を鍛えるような活動を率先してやっていかなければならなかったのではないかな?

我が日本の代表がW杯連続出場なんて、十年ちょっと前には考えられないようなことが起っているのも、サッカー協会が子どもたちの育成という、底辺からの変革に取り組んだからでしょう。
音楽も、それまで何も知らなかった人に突然ジャズのインタープレイを楽しめといっても無理があります。
そのおもしろさを、あるいは楽器を弾くことのすばらしさを、ことあるごとに紹介していくような活動が必要なんだろうと思います。
ぼくが大学で教えたり、いろんなクリニック活動をしているのもそんな理由があるからです。
将来、時間に余裕ができれば、もっと小さな子供たちに音楽のすばらしさ、楽器を弾くことのすばらしさを教えるような活動ができたらな、と思う今日この頃です。

ということで長々書きましたが、こんなふうに日々、いろんなことと葛藤しながら暮らしています。
きっとイチローも中田も、朝青龍もみんな悩んでいるんだろうな、いろいろと。
そんな中でも結果を出している彼らは、本当に凄い。僕もがんばります。
名古屋の僕のライブに来られる方、 期待していてくださいね。
それと、これから僕の演奏を見に来られる方もみんな、期待していてくださいね。アスリート系納浩一は、明日からも戦い続けます。
って、なんか政治家の広報みたいになってしまいましたね。ではでは。

CODA /納浩一 - NEW ALBUM -
納浩一 CODA コーダ

オサム・ワールド、ここに完結!
日本のトップミュージシャンたちが一同に集結した珠玉のアルバム CODA、完成しました。
今回プロデュース及び全曲の作曲・編曲・作詞を納浩一が担当
1998年のソロ作品「三色の虹」を更に純化、進化させた、オサム・ワールドを是非堪能ください!