bass-tv.netのコラムより転載

音楽のルーツについて

どちらかというと、僕は世間一般的にはジャズベーシストという範疇に入れられていると思うのですが、僕自身は、ジャズももちろん好きですが、元々は14歳でビートルズから始まり、そこからディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、フリー、バッド・カンパニーなどといういわゆるブリティッシュ・ハード・ロックに進み、そのうちグランド・ファンク・レイルロード、ドゥビー・ブラザーズ、リトル・フィートと行ったアメリカン・ロックに移行し、やがてEW&F、ブラザーズ・ジョンソン、グラハム・セントラル・ステーションというブラック・ミュージックに行き着くという中・高校生時代を過ごしましたので、ルーツは全くのロックだと言って過言ではありません。

正直言って、大学に入って初めてジャズを聞いた時は、例えば「なんか、ベースの音ってぼそぼそして聞き取りにくいよなぁ」ってな具合で、この音楽の何が良いのか、よく分かりませんでした。

ではなぜジャズを始めたのか?

それはアコースティック・ベース(以下アコベ)という楽器の持つかっこよさに惹かれたからです。
僕がアコベを始めたのは19歳。それまでは、先ほども書いたような音楽ばかりやって来ましたし、当時はチョッパー全盛期で、ベーシストなら、1ステージに1回くらいはチョッパーソロをしながら客席に飛び込んでいかなければならない、なんていう時代でした。もちろん僕も、何度もやりました!
そんな僕がアコベの魅力にとりつかれたのは、エレベには無い、なにか「俺が本物だぜ!」といわんばかりの、アコベのあのルックスとサウンドにしびれたからでした。
まあ、未だにエレベも弾いていますので、今ではどちらが本物とかどっちの方がかっこいいかなんていう議論など、全く意味がないということは重々承知しているのですが、でも、やっぱりアコベってかっこいいですよね。

そんなことで始めたアコベですが、最初はアコベが活躍する主たるフィールドであるところのジャズが、何を聞いてもピンと来ず、なかなか苦労しました。
もちろん、ピンと来たところで、初心者の僕のアコベの能力では、とても人と演奏できるような状況ではなかったので、ピンと来るまでにちょっと時間がかかったことは、それはそれで良かったかも知れません。

まあ、とにかく大変な楽器です。結局、エレベと同じようなレベルで演奏できるようになったと実感したのは、10年ほど経った、それこそ30歳前後の頃です。
石の上にも10年、ですね。それまでは何度か、「ああ、もうアコベとエレベの両立は無理だ。あきらめよう。」ということで、アコベを弾かなかった時期もありました。
でも、いつのまにかまた練習を始めてしまっているんですよね。
こういうのがきっと、「好きだ!」ってことなんでしょう。

ということで、こんな流れで、いまはアコベもエレベも弾いていますし、またジャズもポップスもやっています。

今一番ベーシストに伝えたいこと

さて自己紹介はこんな所にして、このコラムをお受けする時に、「どんなことを書けば良いですか?」という質問をしたところ、「今一番ベーシストに伝えたいこと、なんてどうでしょう。」という答えを頂きました。

そこで、そのことについて考えたのですが、実はこれといって伝えたい事が浮かんで来ませんでした。
違う言い方をすれば、言いたいことはきっといっぱい、そして多岐にわたってあるのですが、この限られたスペースでそれを言い尽くすには無理があるのかなって感じるわけです。それに、グルーブや奏法、練習法などについて語っても、それはそれできっと皆さん、いろんなメディアを通じて、多くのプロの方が説く、その事に関する情報に接することのできる時代でもありますから、敢えてここで僕がいうのも…、ですしね。

でもせっかくですから、プロのベーシストという立場から自分のことをちょっと書いておきます。
きっとそれが、ひいては言いたいこと・伝えたいことになるのかも知れません。

僕も早いもので、プロとして東京で活動を始めてから25年が経ちました。
その間、多くの方のサポートやレコーディング、それに自分自身のアルバム作成や、教則関係の出版などをやって来ました。またジャズライフという雑誌では、10年以上にわたってジャズの講座を連載しています。大学を始め、様々な場でレッスンというのも25年近くやってきました。
そのなかで、自分のベーシストとしての資質について、もっとも良い点を挙げるとするならば、それは持久力と丁寧さといえるような気がします。

実際、自分自身にどれほどの音楽的才能があるのか、はたまたないのかは、良く分かりません。
先にも言ったように、レッスンをもう25年近くやって来ましたから、それこそ200人くらいの生徒を教えてきましたので、彼らと比較して、「ああ、やっぱり多少は、僕は音楽に向いていたのかな」というような気もします。でももちろん上には上がいますからね。
結局才能というのは、身長やルックス・足の速さなどといったものと同じで、僕が生まれたのち、僕自身が「こうしたい!」と願っても、ほとんどの場合どうにもならないものです。

でも、先に挙げた持久力と丁寧さというのは、後天的に何とか作ることのできる能力だと思うのです。
ベースって、コンサートやライブの時なんか、ずっと、黙々とサポートし続けないといけないですよね。これ、まさに持久力。言い換えれば、途切れない集中力です。

なおかつプロの仕事は丁寧でないといけない。これは、ライブももちろんですが、スタジオワークや執筆、譜面作成などに、より要求されます。
丁寧な作業を黙々と続けられるような人こそが、本当の意味での良いベーシストに向いている人ではないでしょうか。

ただジャズの場合、それだけでは足りません。

というのも、ジャズの場合、ベーシストもソロが回ってくれば主役になります。
サッカーで言えばフォワード、そう、点取り屋になる瞬間があります。
そのときには、可能な限り爆発しなければなりません。
いや、ジャコなどを聞けば、サポートの最中でも爆発していますよね!
そうでないと、ジャズは面白くなりません。

ちょっと、話は逸れましたが、いずれにしても、プロの現場で、安心して呼んでもらえるようになるには、

まずは「丁寧な仕事と、そのための現場での集中力」だと思います。

そしてそれに加えて、
「誰とも違う個性や瞬間の爆発力」
があれば、もうこれは一流のミュージシャンです。

でも考えれば練習にも、丁寧さと持久力が必要ですよね。
そのように考えれば、どの楽器、いやどの職業や技術にも、それが必要なのかも知れません。
そして、それプラス、創造力と瞬発力が備われば、きっと一流になれるのでしょう。

先天的な才能はそれとして、後天的に得ることができる才能があるのならば、後は努力してそれを得るだけ。それをいつするか?

今でしょう!

けっして、「ああ、俺には才能がない…」なんて諦めないでください。
後から身につく才能も、いっぱいあります。そしてそれは心がけ次第。

ということで皆さんも良いベーシストになって、多くの仲間を喜ばしてあげてください!

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