大変好評を頂いているジャズスタンダード・バイブルの続編、「バイブル2」がいよいよ今月25日に出ます。
まだ予約の段階なのに、アマゾンの「ジャズ等音楽スコアなどの部門」のランキングで、前作を押さえて1位になっている日もあるようです。
有難い限りです。本当にありがとうございます。
皆さんの期待が大きいことをひしひしと感じる今日この頃です。
「2」もまた、皆さんのセッションのお役に立ってくれればと願うばかりです。

さてそんなことで今回のブログのお題目はズバリ、
「バイブル好評についての自己分析、そしてそこから見える、ミュージシャンの道へのヒント」です。
なんて大上段なタイトルでしょう!

でもあまり真面目に取らないでくださいね。基本は、気楽な読み物として読んでください。
でももし読んだ方の中で、そこから何かヒントを得るような人がいれば、
それはそれで、これをブログに書いた甲斐もあるというものです。

ではまずバイブルのヒットの要因についての自己分析から述べたいと思います(って、まるで小論文みたいですね)。
いくつかの要因が考えれますが、まずそれぞれの要因を簡単なキーワードで現してから、個々にコメントを加えたいと思います。

ジャズスタンダード・バイブルのヒットの要因

1)隙間

ヒットの最大の要因は、そこに隙間があったから、あるいはうまい隙間を見つけたからだと思っています。
言い換えれば、「ありそうでなかったもの」ということでしょうか。
これはこの後を読んでいっていただければ、何が隙間だったかご理解頂けると思います。でもとにかく、どんなところにもまだ隙間はあると思います。
そういった、うまい隙間を見つけ、そこを狙うのはポイントかと思います。

2)丁寧

人に読んでもらう譜面を書くにあたっては、可能な限り丁寧であるに越したことはありません。逆に言えば、汚い譜面はミスの元、プレーヤーの集中力を削ぐことにもなります。
具体的にいえば、コーダやダル・セーニョ、リピートなどに関して、可能な限りシンプルな進行がいいでしょうし、かつ最も合理的な進行を提示するべきでしょう。
あるいは、一段に収まる小節の数やコードの大きさ・表記やフォントなどなど、譜面をより読み安くするための要素は、多岐にわたります。
このバイブルの譜面に関しては、そういった諸々を、できる限り僕なりに追求したものだと自負しています。

3)比較・検討

ヒット商品を生むためには、既にヒットしている先行類似商品との勝負ということが当然起こりますから、まずはその商品の内容をしっかり分析し、その商品の良い点・悪い点をきっちりと把握することが肝心だと思います。
そのことに関してですが、なぜ僕がこんな本を出そうと思ったかという経緯をお話ししましょう。

ここ数年(いや数十年かも知れません)、いま世に出ている様々なスタンダード本に関して、僕自身が教えている音楽大学や専門学校において、あるいは実際のセッションの現場等で、レッスンをやっているプロのミュージシャン仲間や生徒達から、それらの本に関する様々な問題点の指摘が有り、結局、これだという本がなかなかないということを何度も耳にすることが有り、また僕自身もそう実感していました。

具体的には、

  • 「コードやメロディの間違いが多い」
  • 「コードの表記が小さすぎる」
  • 「実際演奏しないような曲が結構あり、そのせいで本自体が重すぎる」
  • 「曲によっては左ページの真ん中からはじまって、右ページの真ん中で終わっている。これは読みにくい」

等々。

どのスタンダード集も「帯に短し、襷に長し」ということだったんですね。
そういった問題点はその都度、その現場で処理されていたのでしょうが、その作業はあまりに徒労です。
だったらせめて僕が教えている大学での授業のためにだけでも、しっかりした、且つ使い勝手の良いものを一冊作ろうということで始まったのが、このバイブルの編集作業でした。

そしてまず最初に取りかかったことが、今までに出ている本の問題点の洗い出し。
そこから出てきた問題点を可能な限り一掃させることが、この企画のスタート点でした。
そんなわけで、他と比較・検討し、そこから独自の良さやオリジナリティーを導き出すことが大事だと思います。

4)市場調査

僕自身、セッションのホストをすることが結構あるのですが、そうやって実際の現場に接することにより、現場でセッションに参加する人達のニーズや不満を肌で掴む事が出来ました。そこで耳にした多くの意見が、このバイブルの作成に大きく影響したといえます。
セッションに参加する人達のそういった不満や要望を知り、それに対して最大限答えようとしたものが、このバイブルです。

5)作者の顔

農作物でも最近、どこの誰が作った野菜かということが大事になってきています。

それと同じで、この本の作り手が「納浩一」という、実際ライブシーンで演奏しているベーシストで有り、本を買ってくださった方がその本人と、例えば実際のライブハウスや、あるいはまたSNS上などでコンタクトを直接取ることができ、さらには情報を交換できるという状況はとっても大事だとおもっています。
実際、「あの曲のあそこのコード進行、違うんじゃないですか?」とか、「こんなオルタネーティブなコード進行もありますよ。」といった意見を直接、セッションの現場などで頂いたこともあります。

でも実は楽器もそうなんですよね。ぼくは生徒に、「ビルダーの顔が見える楽器を買ったほうがいいよ!」って、いつも言っています。製作者と直で語り合うことで、作り手の楽器に対する考え方を知り、それと自分の音楽的嗜好が合えば、その楽器を手にするということが、長くその楽器と付き合う上で、とても大事な事だと思います。

6)労力

スタンダードのコード進行に関しては、当たり前ですが、プロのミュージシャンはまず間違いなく熟知しています。
ですから、あえて頭の中にしみこんでいるそういった知識を、わざわざスタンダードに疎いミュージシャンやアマチュアのために、労力を惜しんで編集しようなどと考えなかったことが、今の今まで、こういった本がなかった要因でしょう。

実際「バイブル1」に関しては、編集の構想の立ち上げから完成まで、1年半かかりました。こんなめんどくさいこと(しかも当初は、出版社も決まっていなかったですし、どれほど売れるかなんてことも全く分からなかったのですから)、わざわざやろうなんていうプロミュージシャンは、まず居そうにありません。
でも、ただ1人居た! それが僕だけだったわけです。

やはり労力を惜しんではいけません。苦労は必ず報われる(と信じて生きてないと、ね!)。

ということで、大体こんな点が、このバイブルがみなさんのニーズに上手く応えられた、あるいはこうやって好評を頂いている大きなポイントかと思っています。
それ以外で、こういった本の特殊事情を挙げれば、

1)皆が一冊ずつ持っていないとセッションが成立しない。
2)しっかり使い込んでいる人の本はもうボロボロで(そういった本を何冊も見ました!)、もう一回買っていただける、なんて事もある。
3)昨今のセッションブームに上手く合致した。
4)ジャムセッションを開催するライブハウスなどでも買って頂いており、それが宣伝にも繋がった。
5)楽器をしない人でもなにかの資料用に持ってくれていたり、ジャズを聴くことが好きな人で、聞くための参考資料としても買ってくれている。
などなどです。

まあ、とにかく、実にうまい隙間があったって事でしょうね。

ミュージシャンへのヒント

さてでは次に「ミュージシャンへのヒント」に話を進めましょう。
ここではミュージシャンとして大事で基本的なことを、バイブルの成功要因と結びつけて述べてみたいとおもいます(と、また小論文的ですが)。
(さて、ミュージシャンを目指す人に、何かヒントになれば良いのですが。)

1〕隙間

誰とも違うスタイルを確立すること。
「こんな風に弾く奴、居そうでいなかったな」って感じてもらうこと。
もちろんこれだけ多くのミュージシャンが居るので、なかなか、「誰とも違う」なんていうスタイルは難しいですが、でもきっと隙間はあるはずです。

2)丁寧

プロとしては、やはり仕事が丁寧であるに越したことはありません。特に一流を目指すなら。
プレイはもちろん、譜面書きから、アティテュード(立ち居振る舞い)、発言等々。
(もちろん、なかにはそういった枠にはまらない、規格外の人も居ますが、それはそれとして。)

3)比較・検討

1)にも通じますが、今までに無かったスタイル・サウンド・アプローチを得るためには、もちろん我が道を行けばいいんですが、まずは先人達のプレイスタイルを分析し、それとの比較・検討の上で、自分独自のものを構築するというスタンスは大事かと思います。

4)市場調査

売れることばかり考えるのもどうかと思いますが、でもオーディエンスがどういったものを要求しているかを知ることも大事かと思います。決して聴衆に迎合する必要はないですが、そこらあたり、良いバランスが取れるといいですね。

まとめ

このようにまとめると、バイブル好評の要因も、ミュージシャンとして成立することも、似たようなことに基づいているのかもしれませんね。
そうそう、練習や自分自身のマネージメント等々、そういったことへの労力を惜しんではいけないことも、言うまでも無いですね。

キーワードは「多毛作」

あと、ミュージシャンとしての僕自身の経験で、バイブルとは関係ないですが、もうひとつキーワードを挙げておくならば、「多毛作」です。
畑で、ひとつの作物しか栽培していない状況だと、もしその作物の病気でも広まった時には、全滅の危機に瀕しますよね。
ですから、いろんな作物を栽培して、いろんな状況に対応できるようにしたほうがいいですよね。
それと同じことが音楽でもいえます。
演奏だけで食っていくのは本当に大変です。
ましてやジャズだけではなかなか大変。

僕の周りでも、今やほとんど無くなったスタジオワークや、少子化で過当競争状態の音楽学校の先生、震災以降本当に数の減ったポップスのサポートなど、それぞれの状況は厳しいですが、でも、みんなそういった仕事を多角的にやって、何とかやっていっているようです。(かく言う僕も今、このブログを、NHK-BSの収録の合間を縫ってNHKの楽屋で書いています!)

未来に備え、いろんな状況に対応できるよう、多角的に仕事が出来るに越したことはありません。
音楽を取り巻く状況は刻々と変化していますからね。

もちろん、「おれはジャズしかやんねぇ!」という姿勢も、それはそれで素晴らしいことです。
逆に今の時代には「いそうでいない」ミュージシャンかもしれません。
まあ、どちらが良いのかはわかりませんが、背に腹は替えられるというのも事実。
いずれにしてもなかなか難しいですね。

ということで、ミュージシャンを目指す方、こんな事を参考にしながら、是非頑張って自分のチャレンジを続けてください。
とにかく「継続は力」です。もちろん、その継続の中には自分の在り方についての「しっかりした検証と反省」を伴っていないとダメだとおもいます。
とにかくくじけず頑張ってください。
ぼくも、くじけず頑張ります! まだまだ倒れるわけにはいかんのです!

ジャズミュージシャンの営業努力

さて、ここからはちょっと余談。

昨今CDが売れなくなって久しいですよね。
つい先日も、英国HMVが倒産したというような報道がありました。
あ~、海の向こうも厳しいな。

でもでも、です!
僕は25年ほど東京でミュージシャンをやっていますが、CDが売れたことで生活が潤ったなどという経験は一度もありません!
そんなものは一部の、そう、矢沢永吉や松任谷由実、桑田佳祐、はたまたAKBやスマップ等々、いわゆるJ-Popや芸能界に限った話で、ことジャズミュージシャンで言えば、CDの売り上げで食えている人なんてほぼ皆無!

結局CDは名刺代わりでしかないですね。
とはいえ、その、度外視して良いCDの売り上げですが、せっかく出すのだったら、何とか売れる秘策はないのかなって考えました。

例えば「ぼくのCDを持ってきた人は、チャージ半分!」なんていう割引制度は、十分有りでしょうね。
そのへこみをかぶるのは自分自身ですが、それも「損して得取れ」かも知れません。
でもやっぱりCDの売り上げを伸ばすことに、バイブルの成功パターンは通じないようですね。

ということで、やっぱり我々はライブやってなんぼですね。
ではライブにどうやって客を呼ぶか?
例えばAKBの握手券に対抗して(僕の握手券じゃもちろん、無理でしょう!)、たとえば「僕のライブに来た人はスタンプを押しますから、5回溜まったら1回無料です!」といった回数券という方法も有りかも知れません。
僕ら世代のジャズミュージシャンはとにかく、その集客をライブハウスに任せっきり過ぎで、営業努力が足らないような気がします。
一方その反動かもしれませんが、最近の若い世代のジャズミュージシャンの人達は、その演奏会場に関して、ロックバンドのノルマ性のようなシステムでやっているひとも多いようです。
これは「お店は絶対損はしない! 客はとにかく出演者が集める!」っていうシステムですよね。
これも解らないではないですが、ジャズではなかなか厳しいシステムです。

まあ、努力せずに、時代のジャズ事情やお店の努力に頼りすぎた我々世代のつけが、若い世代にいっているのかも。

そうだとしたら、ごめんなさい!
どちらにしても、ライブの上がりで何とか食って行くのも、本当に厳しい時代です。
とはいえ、ライブ活動で食っているミュージシャンがたくさん居ることも事実。

そんなこんなで、なんとか景気も上向いて、みんなが子供を産みたくなるような状況が出来て、みんながより質の高い音楽を聴きたい・見たいと思えるような日本に、早くなって欲しいと切に願う今日この頃でした。

長文・乱文、失礼しました。
最後までおつき合い頂いて、ほんとうにありがとうございます!

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