「ベーシストのための音楽用語辞典」、今回のキーワードは前回お知らせした、あ行の「味」です。

ベーシストのための音楽用語辞典、今回のキーワードは前回お知らせした、あ行の「味」です。
そうそう、写真は、正月に来客があったので、そのときのために仕込んだカレーです。
まさに「味」繋がりですね。
スパシスは、ポピーシード、カルダモンの粒、クローブの粒、コリアンダーの粒、そして赤唐辛子です。これを、タイ料理用の石臼で挽き、さらに煎ったショウガとニンニクを加えてペーストにします。いやいや、手の凝った料理ですが、これは南インドのココナッツ風エビカレーです。
ペーストを見ただけでもおいしそうですよね。
そのペーストに、ターメリックとレモン汁につけ込んだエビを加えてコトコト煮ます。
そうこうしているうちに、オーブンではタンドリーチキンが焼き上がります。
タンドリーチキンって、思いのほか簡単で、それこそスパイスさえ揃っていればすぐに出来ます。
もちろん、前日からつけ込んでいるので、その時間はかかりますが。
いや、なかなか美味しかったですよ!
さて、それはさておき、では早速「味」のお話から。
僕は料理の基本は、まさにベースだと思っています。日本料理なら昆布やかつお、いりこなどで出した出汁ですね。このインド料理で言えば、スパイスはもちろんですが、タマネギをしっかり炒めることかと思います。これがしっかり出来ていないと良い味は出ません。
音楽で言えば、やはりリズムセクションですね。
決して表に出ることはない(まあ、いまはどんどん前に出てくるベーシストもいますが)ながらも、その下支えがあってこそ、表面に出てくる素材が生きるというもの。
ですので、その料理の味をしっかり出すためには、ベースは本当に大事です。
そして、味わう人にしっかりした知識があれば、「おお、これは本当にしっかりと下味が作ってある!」と感じてもらえるわけですね。
もちろん、そんな知識が無い人でも、その料理の、あるいはその音楽の美味しさはわかるはずです。
ですから、料理も音楽も、ベースが本当に大事だと言うことですね。
さてでは、ベーシストにとって味は、どうすれば出せるようになるのでしょう?
先ほども言ったように、日本料理、インド料理、タイ料理、中華料理、フレンチ、イタリアンと、そのそれぞれによって、当然ベースは異なってきます。
日本料理なら、先ほども言った昆布やかつお、インドならタマネギ、中華なら、鶏ガラとネギとショウガ、ニンニクなどで出した中華ベース、タイ料理ならその中華ベースと、こぶみかんの皮にレモングラスや青唐辛子、イタリアンならトマトですね。
残念ながらフレンチは全く作ることが出来ないのですが、フレンチのベースって何でしょうね?
やはりミルクとバターかな?
それはさておき、ということは、料理によってベースが変わると言うことですね。
これは音楽で言うと、ジャズやサンバ、サルサやレゲエ、ロック、フォーク、演歌、それぞれに応じて、そのベースとなるアプローチは変わると言うことですね。
それぞれに味のベースがあるわけですから、それぞれの音楽を演奏するときには、そういったことをしっかり勉強しておくと言うことかと思います。
でも一人の料理人が全ての料理を作ることが出来るわけではないでしょうし、また食べるのと作るのでは大きく異なります。でもやはり、少なくとも自分が作りたいと思う料理については、しっかり研究しておく必要がありますね。
先ほどの僕の例でいえば、フレンチももちろん好きですが、自分で上手く作ることが出来る気がしないので、もっばら食べるだけ。ですからそのベースもよくわからないわけです。
やはり研究と実践は本当に大事ですね。そして何度もトライして、また失敗を重ねることによって、徐々にどの工程や、どの食材が重要かそうで無いかというようなこともわかってきます。
そうなると、「ああ、だったら僕の好みに合わせて、この量を変えてみよう」とか「この食材を加えてみよう」「この食材は要らないな」といった、アレンジが出来るようになってきます。
音楽で言えば、自分風のベースが弾けるわけですね。いわゆる、「個性」が出てくると言うことでしょうか。
例えばジャコがサンバを弾いても、やっぱりジャコ風になるし、マーカスがレゲエをやっても、マーカス風になるといった具合です。
こうなると、まさにその人なりの味が出てくるというわけです。
もちろん味は、そういった演奏上の問題だけでは無く、もっと言えば、その人の人生哲学みたいなものが、その人の奏でる音楽により濃くす影響することは、言うまでもありません。
人との付き合い方は、当然、音楽のアンサンブルにも関係します。頑固な人や優柔不断な人、押しの強い・弱いといった個人の性格は、当然音楽に影響します。
いわゆる「良い人」が、「心を打つ音楽を演奏する」訳ではありませんが、この「良い人」という価値判断も人それぞれ。僕の経験では、すくなくとも「心を打つ音楽を演奏する」人は、ほとんど、感情表現が豊かで気持ちの強い人、愛情も深い(深すぎる?)、そして割と「子供っぽい」ような人が多い気がします。
言い換えれば、一度楽器を演奏し出すと、一気に頭の中が「子供のころ」の感情豊かな状況にトランス出来るような人が多いように思います。
ですから、時と場合によっては、ちょっと「大人っぽくない」振る舞いにもなりがちですが、この日本にあって、そう、この忖度地獄のような状況の中で、突然「子供の心」で演奏する人が現れるのは、僕にとっては本当に新鮮です。
ましてや海外の一流ミュージシャン、特に天才系はほとんどがそんな感じがします。
もちろん、これは持って生まれたものですから、大人になってから換えることは困難です。
ですから、「自分は自分で良い」「ありのままで」演奏することが大事です。
その意味では、僕はいつも、「ありのままの自分で」と思って演奏するようにしています。
ということでまとめると、まず人間としての「味」というのは、それぞれの人が自分なりに、自分の長所をきっちり見抜きながら、しっかりとしたものを作っていくということが肝心なんだろうと思います。
そして、その人間的な味を、まさにベースにしながら、さまざまな音楽のベースとなるものをしっかり勉強して演奏する、こういったことが、ベーシストにはてとも大事なんだろうと思います。
いかがでしょうか?

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納浩一 CODA コーダ

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