ベーシストのための理論入門講座 ノン・ダイアトニックコード後半
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ベーシストのための理論入門講座の第5回後半です。

今回も、前回に続きノン・ダイアトニックコードについてのお話ししたいと思います。

前回第5回「ノン・ダイアトニックコード・前半」の冒頭に触れたとおり、ノン・ダイトニックコードに関しては、大きく分けて2つの重要なトピックがあります。

それは、

1)サブドミナントマイナー

2)セカンダリードミナントと、そのリレイテッドⅡマイナー

です。

前回ではそのうちの、「前半・サブドミナントマイナー」に関してのお話をしました。

ということで今回第5回・後半では「セカンダリードミナントと、そのリレイテッドⅡマイナー」のお話をしたいと思います。

セカンダリードミナントって?

皆さん、ジャズの勉強を始めたときから今に至るまで、もう「ツーファイブ」という言葉を何度も耳にされたかと思います。

ジャズにおいては、コード進行の中で一番重要な動きですね。

「ツーファイブ」のそのそれぞれのコードの機能は、「ツー」というのがⅡm7(キーがCならDm7)のことで、コードの機能はサブドミナントの代理です。「ファイブ」というのがⅤ7(キーがCならG7)で、そのコードの機能はドミナントです。

ダイアトニックスケール上に出来るコードの中で、Ⅰ(トニック)、Ⅳ(サブドミナント)、Ⅴ(ドミナント)が主要3和音であることは、第1及び2回の講座で説明したかと思います。

ドミナントコードは、そのコードの中に、ルートから見ての3度と7度の音から出来る、不協和な音程であるトライトーン(増4度音程、G7でいうとBとFの音から成るインターバル)を持っていることによって不安定な響きとなります。

それがトニックのコードの、それぞれルートと3度の音(G7→CならBがC、FがE)に進行することによって安定したインターバルに落ち着くというのがドミナントモーションであるということも、第2,3回の講座でお話したかと思います。

またⅡm7は、サブドミナントであるⅣMaj7の代理コードとしての働きを持つということも触れたと思います。

ポップスなどでは、このツーファイブの代わりに、本来のサブドミナントードミナントートニックという進行となる、ⅣMaj7ーⅤ7ーⅠMaj7という進行になることが多いのですが、ジャズの場合はそのⅣMaj7の代わりに、Ⅱm7という、サブドミナントの代理コードを使うことが多いです。

これは、そのルートモーションがⅡーⅤーⅠという4度上昇(ひっくり返せば5度下降)となることによって、より強いルートの流れを作ることが出来るというのが、その理由かと思います。

そんなことで、ジャズではこの「ツーファイブ・ワン」という動きが頻繁に出てきます。

ジャズにはどうして「ツーファイブ」がやたらめったら出てくるの?

さて、ではなぜ「ツーファイブ」が、特にジャズの曲のなかでそれほど頻繁に出てくるのかを考えたとき、その理由として大きく考えられるのが、「セカンダリードミナントと、そのリレイテッドⅡマイナー」という考え方に依るといえます。

ダイアトニックスケール上に現れるⅡm7、Ⅴ7、ⅠMaj7の3つのコードから出来る、「サブドミナントの代理ードミナントートニック」というツーファイブ・ワンだけだと、いくら多いといっても、それが現れる状況には限度があります。

ところがスタンダード曲やそれ以外のジャズ曲で、このツーファイブ・ワンという形を頻繁に目にするというのは、本来のダイアトニックコードからなる「Ⅱm7ーⅤ7ーⅠMaj7」というコード進行だけではなく、それに類するコード進行が随所に作られているからなのです。

簡単にその仕組みをいいますと、解決先のコードを仮のトニックとみなして、その部分が瞬間転調していると考えることによって、その仮のトニックに対してツーファイブを挿入しているということです。そういう考えに基づいて、そこかしこにツーファイブ・ワンが現れてくるという次第です。

ポピュラー理論では、「どんなコードに対しても、それに対するドミナントコードをいかなるところにも入れてもいい」、さらには、「そのドミナントコードに対して、それとユニットとなるリレイテッドⅡマイナーを、そのドミナントコードの前に置いてかまわない」という約束ごとがあります。(ただし、メロディノートと、それらの挿入したコードがぶつかるときはNG!)

そんなわけで、もし作曲者や編曲家、あるいはソリストは、もし自分がそうしたいと思えば、どんなコードも前にも、そのコードに対するドミナントコードを割り込ませることが出来、さらにはそのドミナントコードの前に、それに対するリレイテッドⅡマイナーをも割込ませることも可能となります。

そのようなドミナントコードを、本来のⅤ7に対して、二次的なドミナントコードということで、「セカンダリードミナント」と呼び、そのセカンダリードミナントとカップリングでツーファイブを作るマイナーコードを、そのセカンダリードミナント関係しているということで、「リレイテッドⅡマイナー」と呼びます。

そんなわけで、ジャズを演奏していると、やたらめったら、このツーファイブという進行を目にすることとなります。

もう一つの理由は、ドミナントコードが多くなればなるほど、後ほど触れる、そのコードに対するドミナントスケールを様々に設定することが出来るので、よりアドリズソロを取る上での選択肢が増えるということも、理由として挙げられるかと思います。

本来のコード進行にセカンダリードミナントを入れてみよう!

譜例1)を見てみてください。

これは「Tune Up」というマイルス・デイビスの曲の冒頭の4小節です。

譜例2)では、この最初のEm7に対して、それに対するセカンダリードミナントと、そのリレイテッドⅡマイナーを挿入してみました。

いかがでしょう、問題ないですよね?

ただし2小節目のEm7のところで、メロディノートがD#となってしまうので、そのときのコードはEmMaj7に変える必要があります。

譜例3)では、かなり難易度の高いコード進行となっています。

これは、ジョン・コルトレーンがコルトレーンチェンジ(知らない方は、特に気にしないで、名称だけ覚えておいてください)を使って、Em7ーA7ーDMaj7というコード進行を、ここまで複雑にコード進行に変化させたものです。

コルトレーンの「Count Down」という曲の冒頭の4小節なんですが、その曲では「Tune Up」の全てのコード進行をこのコルトレーンチェンジに換えることによって、曲全体を本当に難解なコード進行に置換しています。

それぞれの曲は、YouTubeの音源などで聞くことができますので、是非聞き比べてみてください。

いずれにしても、このコルトレーンチェンジのように、全てのコードの前にドミナントコードを置くことが出来るという一つの例です。

もちろん、譜例2)や3)の「Count Down」のように、すでにあるコードに対して、後付けでツーファイブを入れることも出来ますが、私たちがよく演奏するスタンダード曲の場合などでは、作曲の時点で、すでに作者が様々に組み込んでいるというのが一般的です。

ということで、この事をまとめておくと、Cのキーで考えるならば、

1)本来のキーにおけるツーファイブは、Dm7ーG7ーC

2)それ以外に現れるツーファイブは、その解決先のコードを仮のトニックと見なした、セカンダリードミナントとそのリレイテッドⅡマイナーであると判断出来る

3)ただし、キーがCの場合でいうと、Fm7ーBb7というツーファイブが現れることがあるが、その2つのコードがEbMa7に解決していない場合は、これは前回の第5回前半で触れた、サブドミナントマイナーの機能を持つコードユニットなので、ツーファイブとは見なさない

となります。

いかがでしょうか?

セカンダリードミナントコードのスケールの判別方法

では、そのセカンダリードミナントコードのスケールの判別方法を、大まかに書いておきましょう。

ここで質問ですが、いわゆるドミナントコードのスケールを、一体いくつ挙げることが出来ますか?

この講座の先を読む前に、いくつあげられるか、数えてみてください。

3つなら50点でしょうか? 6つ挙げられた人は95点ですね。

とりあえず、スタンダード程度の演奏であれば、7つで100点。

それ以上知っている人は、120点ですね。

答えは次の8つです。

●ナチュラル9th系

ナチュラル9th&ナチュラル13thを持つスケール

1) Mixo Lydian

2) Lydian b7

ナチュラル9ththを持つスケール

3) Whole Tone

ナチュラル9th&b13thを持つスケール

4) Mixo Lydian b13th (= Melodic Minor Perfect 5th Below)

●b9th系

b9th&b13thを持つスケール

5)Harmonic Minor Perfect 5th Below

6)Spanish 8th

b9th&ナチュラル13thを持つスケール

8)Combination Diminished

譜例4~11)に、C7でのそれぞれのスケールノートを挙げておきますので参考にしてみてください。

まず、大きく2つのグループに分けました。

それは「ナチュラル9th系」と「b9th系」です。

これはなぜかということを説明しましょう。

例えばC7が解決する先のコードのルートの音を考えてください。

普通に4度上昇(=5度下降)すれば、とりあえずルートの音はFとなりますよね。

すると、その場合2つの可能性があって、それはFのメジャー(FMaj7)かマイナー(Fm7)かということです。(F7は、そのどちらのサウンドキャラクターも持ち得るので、考えないこととします)

FメジャーかFマイナーを決定するうえで最も重要な音が、Aの音かAbの音かといえます。

それは、Cからみるとテンション13thかテンションb13thかとなりますね。

ですので、まずはそのC7のスケールにそのどちらが入っているかで、そのC7の解決先のサウンドがメジャー系かマイナー系かを想定させることが出来ます。

が、それに関して、実は他にも重要な音があります。

それは、Cからみて2番目の音、解決先のルートノート「F」から見れば13thに当たるD、それとb13thに当たるDbの音です。

このどちらの音がそのスケールに含まれるかで、AおよびAbと同じくらい、Fルートのコードに進行したときに、その行き先のサウンドがメジャーかマイナーかを想起させる上で重要な音となるのです。

もしC7のスケールの中にDの音、すなわちナチュラル9thの音があれば、その解決先はFのメジャーのサウンドが想起されます。

逆にDbがあれば、それはFの音から見ればb13thに当たるので、Fのマイナーのサウンドを想起させるということになります。

ということで、そのドミナントスケールにナチュラル9thの音があるときはメジャーコードに進行させるような雰囲気を作る、一方b9thの音があればマイナーコードに進行するような雰囲気を醸し出すということになります。

実は、解決先のコードのキャラクターを決める、13thの音(C7でいうならAbとA)よりも、この9thがナチュラルかフラットのどちらであるかのほうが、解決先のコードのキャラクター決める上で、重要な音と言えるのではないかと思います。

ということで、ドミナントコードのキャラクターを考えるとき、その中にナチュラル9thかb9thか、そのどちらがあるのかというのが、実に重要は判断材料になるということです。

ただ、ナチュラル9thやb9th、またナチュラル13thやb13thがあるからといって、その解決先が必ずメジャーかマイナーかに限定されるというのではなく、逆に聞き手が想起するサウンドをはぐらかすというようなコード進行こそがジャズ的とも言えるので、これはあくまで、そのドミナントコードが響いている瞬間の、聞き手がその先に想起するであろうサウンドがそうであるということでしかないと思っていてください。

さて、ではそのそれぞれのスケールの特徴と、どういった場合にそのスケールを使用するかを決めるのかについて、大まかに記しておきます。

譜例4)Mixo Lydian

ナチュラル9thとナチュラル13thを持つので、解決先のコードサンドがメジャーであることを最も想起させるスケールと言えます。

初心者の中には、ドミナントコード(□7というようなスタイルで表されるコード)を見ると、単純に全てこのスケールを当てはめようとする人が多いのですが、実はこのスケールが使用できる状況はかなり限定的といえます。

このスケールが使用可能なドミナントコードは、次の場合にほぼ限定されます。

a)Ⅰ7→トニックであるⅠMaj7のブルージーな変化系。ブルースなどで現れるⅠ7。

「The Chicken」の最初のコード、Bb7もこれに当たります。

b)Ⅳ7→これもⅣMaj7のブルージーな変化系コード。こちらもブルースなどで現れるⅣ7だったり、また「The Chicken」のEb7がこれに該当します。

c)Ⅴ7→これはまさに、ダイアトニックの5番目のコード、第一義的にこのスケールが当てはまるコードです。

d) Ⅱ7→これはⅤ7に進行する、そのⅤ7に対するセカンダリードミナントです。このコードのことを特別に、「ダブル・ドミナント」と呼んだりします。例でいうなら、「Our Love Is Here To Stay」の1小節目や、「Take The A Train」の3,4小節目(メロディが鳴っているときはWhole Toneですが、ソロが始まれば、Mixoも可能です)などですね。

この4つの場合が典型的ですが、その他、コード進行に関係なく、単独で現れる7thコードなら、どんなときも使用可能とも言えます。

譜例5)Lydian b7

このコードもナチュラル9thとナチュラル13thを持つので、Mixo Lydianと同様、解決先のコードサンドがメジャーであることを最も想起させるスケールと言えます。

このコードこそ、逆にほとんどの場合で使用可能なスケールといっても良いかもしれません。

それは、何よりもアボイドノートがないというのが、その理由として挙げられます。

また、4度上昇(=5度下降)するセカンダリードミナントの裏コード、すなわち半音で解決するドミナントコード(C7→FでいうならGb7)は全て、基本はこのスケールを使います。

その理由は、解決先のコードのスケールともっとも多くの異なるスケールノートを持つので、半音進行であるコード進行上での音の変化が明確になるからです。

譜例6)Whole Tone

ナチュラル9thはありますが、ナチュラル13thもb13thもありません。。

しかしながら解決先のサウンドとしては、やはりナチュラル9thがあるので、メジャーなサウンドを想起させると言えます。

言い換えれば、このスケールの特徴はなんといっても#5thの音であるといっていいでしょう。

先ほども例に挙げましたが、「Take The A Train」の3、4小節目がその典型例かと思います。

皆さんもすぐに、あの部分のサウンドが耳に聞こえてきますよね。

逆に、あそこ以外で、このスケールがピンポンとで当てはまる曲というのを、スタンダード曲の中では、僕はほとんど知りません。スティービー・ワンダーの「Tou Are The Sunshine Of My Life」のイントロでも使われていますが、なかなか使いにくいスケールかと思います。

ここで重要なことは、よくこの「#5」というテンションと、「b13th」というテンションを一緒くたにしてしまっている人がいるのですが、実はこの2つは、音は同じでも、その意味は全く違うということです。これは結構重要なのでしっかり覚えておいてください!

譜例7)Mixo Lydian b13th (= Melodic Minor Perfect 5th Below)

このスケールの解説に関しては、譜例8)の Harmonic Minor Perfect 5th Below(Hmp5↓)を説明してからにしたほうがいいと思いますので、先に進んでください。

譜例8) Harmonic Minor Perfect 5th Below(Hmp5↓) 及び 譜例9)Spanish 8th

b9thとb13thを持つので、解決先のコードサウンドがマイナーであることを最も想起させるスケールと言えます。

この2つは、その使用法に関しては、ほとんど同じと考えていいでしょう。

この2つのスケールの違いといえば、テンション#9thの音です。

Hmp5↓に、テンション#9thの音を加えたものがSpanish 8thとなります。

そもそも、Hmp5↓というのは、ナチュラルマイナースケール上のⅤのコードが、Ⅴ7ではなくⅤm7となってしまい、ドミナントモーションが作れないといった理由から作られたスケール「ハーモニックマイナースケール」上に現れるⅤ7に対応するスケールだったということは、以前の講座で解説したとおりです。

言い換えれば、このスケールはわざわざマイナーコードに解決するために作られたスケールといえますから、その目的通り、このスケールを使うときは、マイナーコードに進行するというのが最もふさわしいといえます。

そして、このスケールの問題点であるところの、b9thの次の音が、コードトーンでのナチュラル3rdの音になり、その2音の間隔に全音プラス半音という音飛びが出来てしまうので、どうしても中近東的な響きになってしまいます。そのことを解決するために、その間に#9thの音を入れたものがSpanish 8thですから、これら2つのスケールを使用する状況はほとんど同じといっていいでしょう。

もっといえば、僕は、Hmp5↓が使える状況であれば全て、Spanish 8thを使用していいとまで思っています。

で、先の譜例8)のMixo b13thはなにかというと、実はこれはHmp5↓と同じで、Melodic minorスケール上の5番目に出来るⅤ7に対応するスケールですので、使用可能な状況もほとんどHmp5↓と同じといっていいでしょう。

ナチュラル9thとb13thを持ちますが、やはり解決先のコードサンドがマイナーであることを想起させるスケールといっていいでしょう。

代表的な例としては、皆さんもよくご存じの「枯葉」の6小節目のコード、D7のスケールがこれに該当します。

譜例10)Altered

このスケールは最もジャズ的なサウンドを持つといっていいでしょう。

b9th、#9th、#11th、b13thという、いわゆるオルタードサウンドを醸し出すテンションを全て持っているからです。

ですが、先ほども触れたように、このコードがメジャーコードに解決するということは、ジャズでは頻繁に起こります。

ジャズ的なサウンド、言い換えればビ・バップ的なサウンド(=チャーリー・パーカー的サウンド)に関して最も重要なスケールですから、このスケールをどれほどうまく使いこなせるかが、あなたの取っているソロがジャズっぽいかどうかを決める上で実に重要となってきます。

譜例11)Com.Dim

このスケールも、Alteredとともに、最もジャズ的なサウンドを醸し出すことの出来るスケールかと思います。そのAlteredとの違いは、ナチュラル5thとナチュラル13thの音があることです。

ですので、Alteredより明るいサウンド(これは僕の個人的な見解)を得ることができます。

また数学的に、シンメトリック(左右対称性)な並びなので、無機質な、言い換えれば数学的なフレーズを作ることが出来ます。

このスケールも、ジャズっぽいソロを取るときには、実に重要なスケールとなります。

いかがでしょうか?

ドミナントコードにおける、スケールごとの違いやサウンドの雰囲気が判ってもらえましたか?

ということで、是非こういったスケールをどんどん使うことになれて、ジャズっぽいソロにトライしてみてください!

ではまた次回、お楽しみに。

CODA /納浩一 - NEW ALBUM -
納浩一 CODA コーダ

オサム・ワールド、ここに完結!
日本のトップミュージシャンたちが一同に集結した珠玉のアルバム CODA、完成しました。
今回プロデュース及び全曲の作曲・編曲・作詞を納浩一が担当
1998年のソロ作品「三色の虹」を更に純化、進化させた、オサム・ワールドを是非堪能ください!