ジャズ入門講座伴奏編 同じコードが続くような場合のラインの作り方

ジャズ入門講座伴奏編の第5回目です。

ここまでの4回の講座では、第1および2回で「4ビートにおける4つの音の選択に関しての基本法則」、第3回ではコード進行の中で最も頻繁に現れる「4度上行5度下降」、そして第4回では「それ以外の進行」におけるラインの作り方に関して、それぞれ解説しました。

この4回での解説での内容をしっかり勉強してもらえれば、概ね、大体のコード進行には対応できるようになるのではないでしょうか。

もちろん、スタンダードの中にも様々なコード進行がありますし、中にはかなりやっかいなコード進行が連続するような曲もあります。

またテンポが速くなると、それだけで、頭の回転がテンポに付いていかなくなるので、パニックになってしまう、なんてこともありますよね。

ですから、やはり、曲ごとに、しっかり事前に研究しておくことが大事でしょう。

またもし突然、手強い曲に出くわすようなことがあれば、無理して流れるようなラインを作ろうとせず、アルペジオなどの対応でこなしながら、とにかくテンポが遅くならないように、あるいはリズムが乱れるようなことが無いよう、とにかくリズム第一という姿勢で臨んでください。

さてでは今回の講座では、逆にコード進行が無い、すなわち同じコードが続くような場合のラインの作り方について解説しましょう。

コードが動かないというのは、いわゆるモードジャズの場合がその典型かと思いますが、しかしながら、例えば「Bye Bye Blackbird」の冒頭の4小節や、「Bolivia」 のバンプの部分などに出てくることもあります。

初級者の中には、コード進行があればまだしも、同じコードが続く時のライン作りは苦手という方も結構いらっしゃるようです。

そんなときに備えてのラインの作り方をお話ししたいと思います。

同じコードが続く場合によく出てくるコードタイプは、以下の3つかと思います:

A)マイナーコード(「So What」 でのDm7など)

B)セブンスコード(「Bolivia」のバンプでのG7など)

C)サスフォーコード(チック・コリアの「Litha」のソロセクションなど)

(メジャーセブンスコードが続く場合は、セブンスコードの場合とほぼ同じように考えればいいと思います)

ではラインの作り方について、解説します。

1)偶数小節はすべてドミナントとみなす

譜面の1を見てください。本来はDm7がずっと続くのですが、偶数小節に、そのコードに対するドミナントがあると仮定してラインを作ると、スムーズなライン作りが出来ます。

ここで一つ、大事なポイントについて触れておきます。

譜例1)のAおよびBを見てください。

ここでは、それぞれのコードのスケールは、AはDm7のドリアン、BはG7のミクソリディアンと考えています。構成音としては、どちらもCのアイオニアンと同じです。ピアノでいうと、すべて白鍵のみですね。

ですから、構成音だけで考えると、使用可能な音には臨時記号は一切付かないはずです。

でも譜面を見れば判るように、そこには多くの臨時記号が付いた音が現れています。

そうです、これらはすべて、ターゲットノート(各小節の1拍目の音)に対するクロマティックアプローチノートです。

ジャズにおけるウォーキングラインを、よりジャズっぽく聞かせる上で大事なのが、このクロマティックアプローチノートなんです。

初心者の方の中には、「モードって、そのモードの音しか使っちゃダメなんですよね?」と思っている人がいるかもしれません。確かに、そのモードの構成音を中心に、ソロもラインも演奏されることで、そのモードサウンドを作り出すことが出来るわけですが、それでは早晩、ネタがつきます。というか、ラインの場合は、それだけでは、スムースなラインを作ることは全く出来ません。

ということで、ラインを作るときには、

モード(あるいは同じコードが続くとき)だからといって、そのモードの音だけではスムースなラインは作れない。そのモードの以外の音を、如何にうまく入れ込むかによって、スムースなラインになる。そのモード以外の音というのは、大抵の場合、クロマティックアプローチノートである。

ということを、しっかり頭に入れておいてください。

それと、これは「伴奏講座2」の時にも触れましたが、1小節に4拍の音を割り当ててラインを作る、いわゆる4ビートの場合、「2〜3拍目の音は、その次の小節のコードとのユニットになる」ということを解説しました。

ですから、セブンスコードがずっと続く場合で、偶数小節に、そのコードに対するドミナントコードがあると想定した場合、そのセブンスコードの代わりに、そこがメジャーセブンスコードのなったとしても、できあがるラインそのものはほとんど違いは生まれません。

先ほどもいったとおり、メジャーセブンスコードが続く場合は、セブンスコードが続く場合と同じように考えて良いということがその理由です。(譜例1- B bを参考にしてみてください)

ではサスフォーコードの場合はどうでしょう?

実は僕は、あまりサスフォーコードだからといって、必要以上に、3度の音の代わりに4度の音を使おうとはしていません。基本は、そのサスフォーコードがマイナー由来のコードであれば、1 A)のマイナーコードのように、またメジャー由来のコードであれば、1 B a)のセブンスコードののように作ります。

そのサスフォーコードがマイナー由来かメジャー由来か、そのどちらであるかの判断は、そのコードが現れる状況での理論的な分析から判断できない場合は、これはもう耳で探るしかありません。実際のそのコードが現れる瞬間に、3度の音を弾いてみて、メジャーかマイナーのどちらの方がしっくりくるかを探ってみるのです。それでもはっきりしない場合は、逆にどちらでも良いという事でしょうから、例えばその都度、メジャーとマイナーを交互に使う、なんてこともありかもしれませんね。

しかし、曲によっては、あるいは音楽的な状況によっては、やはり3度の音はどうしても使いたくないというようなときもあるかと思います。

そのような場合に有効なのが、ぼくが「ロン・カーター方式」と命名しているラインの作り方ですが、これは後で解説します。

2)1)の変形バージョンですが、1小節ごとのコード設定を2小節ごとにし、また1)のラインでの各音を、2回連続させたりして対応する方法です。

簡単に言えば、1)のラインを、そのまま倍に引き延ばしたアイデアといえます。

譜例2のAおよびBですね。

ただこれではあまりに単純で、しかも同じ音の連続が、「連続!」しすぎていると思われる方は、譜例2のCのように、クロマティックノートによるアプローチノートや装飾的な動きを入れて、変化を付けてもいいと思います。これくらい変化が付けば、もう元のアイデアがどんなものだったのか判らないくらいですよね。

3)ロン・カーター方式

これは、サスフォーのコードでのライン作りのアイデアです。

ルートから見て、9thと5thの音を多用するアイデアですが、なぜ僕がロン・カーター方式と名付けたかというと、その名の通り、ロン・カーターがこのラインを多用していたからです。そして僕が知る限り、彼が最初に、こういうラインを多用しするようになったのではないかと思います。

というのも、彼が参加していた頃のマイルス・デイビス・グループでは、ハービー・ハンコックやウェイン・ショーターらの作曲による曲を多く取り上げていたのですが、それらの曲の多くが、そのコード進行が、いわゆるスタンダード曲のそれとは比較にならないほど難解で、それ故、ライン作りも困難を極めるような曲だったからです。

「ESP」「Neffertiti」「Sorcerer」などがそれにあたります。

これらの曲にはほとんどツーファイブというような常套のコード進行は出てきませんし、それぞれのコードの関連も、ほとんど分析不能といってもいいような流れで進行します。

そんなコード進行に対応するのに有効な、ライン作りの方法論が必要だったからうまれたアイデアがこれだったのではないでしょうか?

もう一つ考えられるのは、当時のマイルスバンドのライブでは、曲によっては、もうあり得ないようなアップテンポで演奏されることもしばしばでした。

そんな高速でのテンポでの演奏の時に、より左手の動きの少ないラインを作るということも必要だったのではないでしょうか?

そういったコード進行や、またテンポでの演奏の場合、コード間を流れるようにラインを弾くということよりも、まずはルートモーションをはっきり感じさせること、そしてシンプルなラインでも、とにかくグルーブを維持させることが肝心です。

しかも、マイルスやハンコック、ショーター達のソロの、あの無機質なサウンドをフォローするにも、ベースラインは、コード進行をはっきり感じさせるということより、それぞれのコードの一つ一つが、単独で無機的な響きを持つ方が、バンド全体の方向性に合っていると思います。

そんな様々な要求が重なって、そこから必然的に生まれたのが、このロン・カーター方式でのラインではないかと、僕は思っています。

ということで、譜例3を見てください。

ここに様々な、ロン・カーター方式でのラインの作り方を挙げてあります。

どれも単独で成立しますから、このそれぞれを、順列バラバラで、好きなように組み合わせながらラインを作る練習をしてみてください。

いかがでしょう? 見ていただければ判るように、実際、このラインはマイナーコードでもセブンスコードでも、さらにはサスフォーコードでも使えます。いや、実はメジャーセブンスコードにも使えます。

違う言い方をすれば、m7(♭5)やディミニッシュ、オギュメントセブンスといった、5度の音が変化していたり、そのスケールに♭9thの音が絶対に必要なフリジアンでのマイナーコード以外のコードでなら、いつでも使えるラインなんです。

ちなみに、ドミナントセブンスコードで、そのテンションに「♭9th」が指定されている場合でも、かなりの確率で、ベースはナチュラル9thを弾いても大丈夫なことがあります。これに関しては、実際の現場でその2つの音を引き比べてみて、ナチュラル9thでも問題ないことが確認できれば、ラインにナチュラル9thの音を使っても差し支えないと、ぼくは考えています。

肝心なことは、

譜面に書いてある情報にとらわれず、最後は自分の耳で判断すること!

です。

今回ここで挙げた1〜3の方法を、それぞれ組み合わせてラインを作れるようになれれば、もう、大抵のワンコードの状況でのライン作りに困ることはないと思います。

こういったことが自由に出来るようになれば、その先はもうソロを取っているときと同じで、様々な縛りにとらわれることなく、自由自在にラインを作っていけば良いのです。

いずれの場合にしても、とても大事なことは、

4とか8といった小節数の区切りをしっかり感じながらラインを作る

ということです。

これも初心者に多いのですが、「モードだから自由なんだ!」ということばかりに気を取られて、そういった単位での区切りを気にすることなく、ただ漠然とラインを作っていると、一緒に演奏しているミュージシャンだけで無く、自分自身でも、今どこをやっているのか判らなくなって、ロスト(見失う)してしまう人が多いような気がします。

「So What」をやっていて、次がDm7なのかE♭m7なのか判らなくなった経験、あるでしょ?

あるいは、16小節続くDm7の、いまが3小節目なのか8小節目のなのか、はたまた13小節目なのか、わけがわからなくなってしまったこと、なかったですか?

4や8の単位を無視していて起こりがちな自体が、まさにこれです。

そしてベーシストがそういったフォームを間違えてしまうと、あとはその演奏は、ただただ混沌とするばかり。

ということで、ベーシストは、

死んでもフォームを間違えてはいけない。もちろんグルーブを失ってもいけない!

です。このことは、いついかなる演奏でも肝に銘じておいてください。

フォームを間違えたり、グルーブを失うことは、「万死に値する!」と。

ということで、次回のレッスンをお楽しみに。

CODA /納浩一 - NEW ALBUM -
納浩一 CODA コーダ

オサム・ワールド、ここに完結!
日本のトップミュージシャンたちが一同に集結した珠玉のアルバム CODA、完成しました。
今回プロデュース及び全曲の作曲・編曲・作詞を納浩一が担当
1998年のソロ作品「三色の虹」を更に純化、進化させた、オサム・ワールドを是非堪能ください!