四方山コラム「語楽と音学」
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今回の四方山コラム、第16回目は、「語楽と音学」です。

本当なら「語学と音楽」ですよね。

でも、今回のコラムの内容は、外国語を学びながら楽しむことと、音楽を楽しみながら学ぶことということの共通性に関してお話ししてみたいということで、こんな題にしてみました。

日本人で普通に学校に通った人ならそのほとんどの人は、英語で苦しんだ(楽しんだ?)経験をお持ちかと思います。

その苦い(楽しい?)経験が、実は楽器の練習や上達に多くの示唆を与えてくれるのではないかと感じていて、そんな視点から、音楽の勉強に、外国語を勉強した経験を生かすことが出来るのではないかと思ったからです。

ではまず僕の語学経験をお話ししましょう。

僕はいま、かれこれ4年ほどスペイン語を習っていますが、なぜスペイン語を習い始めたかという経緯からお話しましょう。

音楽的に言えば、僕が10代の最初から親しんできた、ジャズやロック、ソウル、ファンク、ポップスといった音楽がもっぱら英語圏のものだったのに対し、20代以降、真剣に音楽を勉強し始めてから出会った音楽の多くが、ラテン語圏、すなわちポルトガル語圏で出来たブラジル音楽であったり、スペイン語圏で出来たキューバ音楽でした。

英語は、これはそれこそ、中学入ってから大学を卒業するまで、いやいやながらですが、どうしても勉強せざるを得なかったことは皆さんと一緒です。

さらにそこから4年間、アメリカに留学したときには、これはもう最低限の会話が出来ないと生活がままなりません。そんな必要に迫られて喋っているうちに、なんとか意思疎通くらいは出来る英語力は身につきました。

でそのあと思い立ったのは、もう一つくらい、意思疎通が出来る程度に外国語を学ぼうということでした。

最初は40代前くらいのときに一度、韓国語、そうハングルを勉強しました。

きっかけは、日野元彦さんのバンドで初めて韓国ツアーをしたことです。

ハングルは、実はかなり日本語との共通性があり、「これはいけるんじゃないか?」と思ったこともありますし、韓国の人が皆、僕たちにとても親切に対応してくれたこともあったからです。

韓国が好きになったんですね。でも残念ながら1年ほどで挫折してしまいました。

その次に、渡辺貞夫さんのバンドで、アンゴラ出身でポルトガルに在住のパーカッショングループ、「ン・ゴマバカンバ」達と、数年に渡って何度も一緒にツアーをする機会があったときにポルトガル語にトライしましたが、こちらも挫折。

その両方の挫折の大きな理由は、僕の周辺にその言語を学べる先生がおらず、また身近にその言葉を喋る友人もいなかったので、独学で勉強するしかなかったということが大きいのですが、それ以外の理由としては、世界的に見ると、ハングルもポルトガル語も、さほど大きな数の人が喋っていないということもありました。

でもやっぱり何かもう一つ、勉強したいという想いが断ち切れず、結果、最後にたどり着いたのが今勉強しているスペイン語です。

世界的に見ると、スペイン語圏というのは本当に大きいものです。

おそらく、英語の次に、その言語を喋る人が多いのではないでしょうか?

特に中南米はかなりの数の国がそうですし、しかもそこは音楽の宝庫でもありますしね。

スペイン語が、片言でも喋ることが出来れば、音楽の世界でも、多くのミュージシャンとコミュニケートが録れるのではないかと思ったからです。

さらにラッキーなことに、近所に、なんとスペイン語を教える、スペイン人の先生がいらっしゃったんですね!

ということで、いろんな条件がうまく揃い、スペイン語を習い始めて4年ほど経ちます。

いまでは、写真のように、スペイン語の言語の本を読めるほどになっています。

といっても、レベルはおそらく小学校の低学年ほどのものかと思いますが。

ということで、前置きが長くなりましたが、そんな経験から、今回のコラムを書こうと思い立った次第です。

では早速そのお話を始めましょう。

音楽と語学の勉強には、次のような共通のアプローチがあると思います。

1)読む

2)書く

3)聞く

4)会話する(これはジャズには最も重要ですが、他のジャンルの音楽でも、ミュージシャン相互の会話は、アンサンブルの中で大事だと思います)

この4つのテーマに分けて、その共通性などについてお話をしてみたいと思います。

1)読む

英語の教科書にはまず最初に「This is a Pen.」が出てきますよね。

まあ、会話で、「これはペンです。」なんて喋ることはまず無いですが。

だってそんなの、「見りゃ判るだろう!」ですから。

でも、確かに「これは何ですか?」と尋ねられて、「これは○○です。」と答える状況もあるでしょうし、基本の文法を学ぶという意味では、それなりに意味のある文章かと思います。

ま、それはともかく、「読む」というのは、日本人が、外国語はもとより、日本語を勉強する上でも、最も重要な勉強であることはいうまでもありません。

では、音楽において「読む」とはどんな勉強でしょうか?

これはやっぱり、まずは読譜でしょう。

でも、ここでいう「読譜」は、ただ音符を読むだけではないと思います。

「This is a Pen.」をみれば、どれが主語で、どれが動詞や副詞、目的語であるかを考えますよね?

言い換えれば、その文章の構造を分析するということかと思います。

音符というのは、「this」であったり「pen」に当たるわけです。いや、もっといえば、「t」や「p」という、アルファベットそのものかもしれません。

そのアルファベットが「this」というように、4つ集まることで、日本語での「これ」という意味の単語になるわけです。

これは音学では「フレーズ」かもしれませんし、「コード」や「スケール」かもしれません。

ということで、譜面を読むというのは、そこに書かれている音符やフレーズが、それが現れた場所でのコードやスケールとどういった関係性があるのかといった、理論的な背景を考えることも含まれます。

アマチュアミュージシャン(もちろんプロでも!)の多くが、「読譜は苦手!」と感じているでしょう。でも、譜面をしっかり勉強するということは、音楽を学ぶ上で、本当に大事であり、譜面というのは、様々な情報が詰まった、素材の宝庫だと言えます。

2)書く

そういう意味では、「譜面を書く」という作業も、苦手、というか、ほとんどやったことがないという方も多いかもしれません。

それは語学でいうと、当然、文章を書くと言う作業です。

そういえば、学生の頃、「以下の日本語を英語に直しなさい。」というような設問がありましたね。僕は本当に苦手でした。

いまでも、海外にメールしたり、手紙を書いたりするのは苦手です。

でもこの 「文章を書く」という作業も、語学を勉強する上では、本当に大事ですよね。

僕はいま、スペイン語で簡単な日記を書くようにしています。

例えば、「朝起きて、我が家の犬を散歩に連れて行ってから、ジョギングしました。それからシャワーを浴びました。」くらいのものですが。

音楽でも、書くというのは本当に大事です。

その場合、いろんな「書く」があると思います。

もっとも身近なものは、耳コピしたものを譜面に起こすという作業でしょうか。

その場合、ぼくは生徒に、「耳コピしたものは、是非譜面に起こすようにしてください。すると、何年か経ったときに、もう一度勉強し直すことが出来ますし(耳コピは、そのときは覚えていても、数年経てば、やはり忘れてしまうことが多いですから)、また譜面に起こすという作業を通じて、実は読譜の勉強にもなります。」と言っています。

あるいは、「書きソロ」というもの本当に大事です。

ジャズの場合、ソロは即興でするものと思われがちですが、これもよく生徒に言うのですが、「じっくり時間を掛けて作れないソロが、即興で浮かんでくるはずがない。だからソロがうまくいかないという人は、まずじっくり時間を掛けて書きソロを作るような勉強をしてください。」と。

まずは、コード進行やスケールを研究して、同時に素晴らしいベーシストのソロなどを勉強して、それらを総合して、じっくり時間を掛けながら「書きソロ」を作るというアプローチが、ソロの上達には実に大事です。

さらには作曲や編曲という、「書く」アプローチもあります。

僕はバークリーの作曲・編曲科を卒業しましたが、そこで取り組んだ作曲や編曲という勉強は、実は自分のベースプレイに多大な影響を与えてくれました。

ジャコやマーカスもそうですが、素晴らしいベーシストは、そのほとんどが素晴らしい作曲家であり、また編曲家でもあります。

特にベーシストというのは、アンサンブルやハーモニーの一番下の部分を受け持ちながら、その実、音楽全体を俯瞰してみることの出来る知識と経験が必要です。

そんなことで、「書く」という作業は、音楽においても本当に大事です。

3)聞く

語学で大変なのが、「聞く」でしょう。

例えば、目の前にいるアメリカ人の友達が喋っていることならなんとか聞き取れても、英語の映画やニュースは、さっぱり聞き取れないって、ありませんか?

僕はまさにそうですし、さらにスペイン語に関していえば、先生が目の前で喋っていることすら、まだまだ聞き取れません。教科書にある1分くらいの会話を、10回くらい聞いて初めて、なんとか80%の単語がキャッチ出来るレベル。

特にスペイン語圏の人はみんな、早口ですからね。

でも会話をするには、相手も喋っていることを聞き取れないと、会話は成立しませんよね。

では音楽ではどうでしょう?

音楽の場合、「聞く」だけなら比較的簡単かもしれませんね。

ただ、聞いたものに対して反応しようと思うと、これは全く次元が違ってきます。

ジャズではこの、「聞く」のあとに、「それに対して反応する」ことが必要になりますが、こうなると、「聞いたもの」がどういうもので、それに対してどのように「反応」するべきなのかという判断が必要になりますから、「聞く」という作業の質が問われます。

語学で言うなら、「相手の喋っている内容の理解はもちろん、その意図や気持ちまで読み取る」というようなレベルでしょうか?

となると、これは本当に高い次元の語学力も必要ですし、人間としての人生哲学なんかも関係してくるかもしれませんね。

いずれにしても、リスナーとして「聞く」というレベルではなく、ソリストやシンガー、周りのミュージシャンの演奏内容はもちろん、その意図や気持ち、彼らが進みたいと思っている方向などを推測するといったことまで聞き取る力が、ミュージシャンには必要かもしれませんね。

4)会話する

今度はこちらが喋る側です。

自分が言いたいことをしっかり喋るためには、音楽理論(=文法)も必要ですし、スケール(=単語)もたくさん知っていないといけないでしょう。

これを流ちょうに出来るようになるには、本当にたくさんの勉強をしないといけません。

僕の今のスペイン語の能力で言えば、名前が言えて、好きな食べ物が言えて、朝起きてから今までにやったことがなんとか伝えられる程度。

ジャズでいうなら、多分ジャズを初めて1年くらい、「枯葉」のセッションで、なんとか崩壊せず最後までたどり着きました、程度でしょうか。

それが、いまの僕のように、すくなくともかなりのレベルで自由自在にラインやソロ、あるいは周りのミュージションとの会話が出来るようになるためには、40年の歳月がかかりました。

しかも、朝から晩まで練習して、来る日も来る日も演奏して、ですからね。

まあ、語学も、生まれてからずっとその言葉に囲まれて生活すれば、どんな子供でもその国の言語がしゃべれるようになるんでしょうが。

ということで、楽器の練習、音楽の勉強でも、「読む」「書く」ということにしっかり取り組み、さらには、意図を明確に持って意識的に「聞く」という訓練をした上で、「会話する」という経験を豊富に積むという流れが大事なんじゃないかなと思います。

いかがでしょうか?

でも、スペイン語で本当に簡単な会話が出来るようになると、ほんのちょっとでも、意思の疎通が出来たと思えて、その人と近づけた気がします。

コミュニケーションというのはそういうものかと思います。

語学って、そうやってほんのちょっとでも意思の疎通が出来るようになると、楽しくなりますよね。まさに語楽です。そして音楽も!

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