コロナ騒動の中「一体どんな練習をしているんですか?」
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昨日5月14日、リットーミュージック主催で、生演奏を配信しました。

ピアニストの青柳誠さんとのデュオの演奏でした。

見てくださった方も多かったと思います。ありがとうございます。

平日の昼間ということで、時間が合わなくて見られなかったという方もいらっしゃったようですので、また再配信出来るような状況が整えば、是非告知させていただきたいと思います。

とにかく、音楽は、特に僕のように現場でたたき上げられてきたような者にとっては、生演奏が一番です!

人と演奏するのは本当に楽しいことですし、特にこれほどまで人との接触を自粛しているような状況ではなおさらです。

昨日も、ほぼ2週間ぶりの人との合奏でしたが、本当に楽しかったです。

特にジャズという音楽は即興演奏がその醍醐味ですから、その意味では瞬間に何が起こるかというようなハプニングを楽しむ音楽と言えます。そのためにも、事前の練習ももちろん大事ですが、実際、いろんなミュージシャンとの合奏から、より多くの経験値を積むということが重要になってきます。

それ故、「ジャズがうまくなりたければ、ジャムセッションに行け!」と言われる由縁かと思います。

そうやって、40年もやってきた自分にとっては、これほどまでに実戦から遠ざかったことは、音楽人生でも初めての経験。

でもこれは、世界中のジャズミュージシャンすべてが経験している、このコロナ禍ではないでしょうか? 本当につらいし苦しいし、また退屈です。

そんななかですが、それでもとにかく技術や感覚を落とさないように、やはり楽器を触り続けるしかないのかなと思っています。

ということで、昨日の配信演奏を紹介する時にも、「とりあえず腕を落とさないよう、一日に数時間は練習をしています」と書きました。

するとサロンに、「一体どんな練習をしているんですか?」という質問をいただきました。

ということで今回の四方山コラムでは、4月以降、すっかり家にこもるようになったここ2ヶ月、技術の維持のためにどんなことを考え、またどういった練習をしているかについて書いてみたいと思います。

コロナでこのような状態になるずっと前から考えていたことは、もうそれほど技術を上げるための練習は、少なくとも自分にとっては必要ではないということです。

もちろん、自分の技術に納得しているわけでもなく、また慢心でもありません。

というよりも、もうこの歳になると、新たに技術を向上させるといっても、どんなにハードな練習を積んだとしても、その伸びしろはもうほとんど無いというのを実感している今日この頃です。

はっきり言って、技術的には、20代や30代辺りの方がうまかっただろうし、指など、いまより速く動いたような気がします。もちろん、練習に対するモチベーションも高かっただろうし、集中力もあったでしょう。

そんなこんなで、今は技術を上げるというよりも、豊かな感性を磨き、表現力を向上させるというようなことに重点を置いていました。

そのためには、例えば映画を見たり本を読んだり、美術館に行って素晴らしい絵画を見たり、あるいは行ったことのない場所や国に行って、経験したことのないものを見聞きする、また食べたことのないような味と出会うという、そんなことから、自分の感性を磨き、そこから得た感動や発見を自分の演奏に反映させる、そういったスタンスで、音楽における表現力を向上させるというスタンスでやっていました。

まあ、演奏の技術の維持という意味では、もうほとんど毎日、どこかで誰かと演奏しているわけですから、少なくとも落ちるということは無かったように思います。

また、たまに目の前に現れる、「おいおいおい、こんな曲、弾けるわけないやん!」というようなチャレンジングな曲をやらされるようなライブやコンサートの時に、「ぼく、出来ません!」とは言えませんから、そういうときには何日も掛けて必死で練習するわけです。

そんなときには、ちょっと違うテクニックを身につけたり、というようなことも無かったわけではありません。

ただ、今回のこのコロナ禍のように、もう何日も全く実戦から離れるということは、先ほども言ったように、経験したことがありませんでした。

これはミュージシャンとしてはもう、全く未知の経験です。

ただ幸いなことに、昨年頭にこのサロンを立ち上げたことで、ここ1年ほどずっと、若かりし頃に採譜したり研究した音源や譜面を、数十年ぶりにもう一度採譜し直したり、また研究し直したりしていました。

それが大いに刺激になっていたことは間違いありません。

しかしそんなことが、まさかこのコロナで役立つとは思いませんでした。

ということで、今どんな練習をしているかという、本題に進みましょう。

写真は、サロンの「お勧めアルバム」でも紹介した、ジョン・アバクロンビーのアルバム、「Straight Fright」に収録されている、「My Foolish Heart」のジョージ・ムラーツのソロを採譜した譜面です。

(この譜面に関しては、後日、「こんな曲をコピーした」のコーナーで、この演奏について詳しく解説しますので、そのときに有料にて投稿します。ご期待ください!)

いまはこれを、とにかくムラーツと同じレベルとは言いませんが、最初から最後まで、スムースに弾けるように練習しています。

これ、もう本当に美しいソロなんですが、あまりにハイレベル過ぎます!

最初に採譜したのは、大学生の頃ですした。アコースティックベースを始めてまだ2年目くらいの頃ですが、あまりの美しさに、そのレベルの高さなど考えずに、とにかく採譜してみました。

でもそのときは、まだ全く楽器のテクニックが無かったので、ムラーツが弾いている音域の、その1オクターブ下でしか弾くことが出来ませんでした。

そして、それから8年ほどが経った時ですが、バークリーも卒業して、半年間、そのときも、今と同じように、ボストンのアパートにこもって練習していた時、再びこの曲に挑戦しました。

そのときは、楽器を始めて10年目くらいでしたから、ムラーツと同じ音域で出来ました。

確かその頃は、そこそこ出来たような記憶があります。

そして今回は、それから30年経った今です。

いや~、やっぱりめちゃくちゃ難しいです。

でも、きっと30年経って、僕も歌心みたいなことも多少判るようになってきたと思いますので、今回はテクニカル的な部分だけじゃなく、そういうようなところももう一度よく考えながら、このソロにチャレンジしています。

先ほども言いましたが、基本は、昨今の練習のアプローチは、音楽的感性を磨くということで、こういった他人のソロや、クラシックのエチュードというような、すでに書かれてある譜面を練習するのではなく、もっぱら頭に浮かぶ音を楽器にぶつけて、その表現力を問うということがほぼ99%占めていました。

でもこうやって久しぶりに、人が弾くソロを徹底的に練習すると、やはり自分の手慣れたフレーズや指の運びだけではなく、逆に自分のは全く浮かばないような、フレージングや動きがあります。

こんなコロナのおかげで、そんなことにもう一度向かい合えたというのは、まさに「万事塞翁が馬」といえます。

ただお恥ずかしいことに、これまた写真にあるように、ほんと、何十年かぶりに、右手の中指にマメが出来てしまいました。これは、ここ数日、長時間の楽器の演奏から遠ざかっていたこともありますし、また普段にはない指の動きやフレージングなんで、あまり使っていないような指の部分を駆使したこともあろうかと思います。

さらに言うなら、すでに人差し指のマメは、一旦潰れて、やっと綺麗になったところなんです。

ということで、このコロナでの自粛の間に、この「My Foolish Heart」のソロを、完全に身体に入って、スムースに弾けるようになるまで練習しようと思っています。

もしそれが出来るようになった時には、サロンでも公開しようと思いますので、是非ご期待ください。

それ以外の練習でいうと、コロナで家にこもるという状態が始まった当初思い立ったのは、「よし、この機会に、もう一度アルコ(弓弾き)を練習してみよう!」ということでした。

でも、若かりし頃にやっていたクラシックのエチュードを引っ張り出してまたやってみるというのではなく、スタンダードの、特にバラードのメロディを弾くということをやっています。

いまもっぱら練習しているのは、デューク・エリントンの曲、「Sophisticated Lady」と「Prelude To A Kiss」を弾いています。

こちらの方も、とにかく納得できるような歌い方、ピッチなどで演奏できるようにトライしています。

音域は、もちろん高い方です。「Sophisticated Lady」ならHi-Gbまで出てきます。

これもなかなか大変です。

あとは、サロンの動画でも上げましたが、C~Gのスケール練習ですね。

あの練習は、これも大学生の頃からやっていますが、それから40年経ったいまでもやりがいがありますし、さらに言えば、あれさえやっておけば、よほどのことがない限り、基本的な技術が落ちるようには感じません。

やはり楽器はスケールに始まりスケールに終わると言うことでしょうか?

ということで、皆さんもこの自粛の間、そう、「Stay home」のこんな時こそ、その有り余る時間を有効活用して、しっかり練られた有意義な練習メニューを作って頑張ってくださいね!

CODA /納浩一 - NEW ALBUM -
納浩一 CODA コーダ

オサム・ワールド、ここに完結!
日本のトップミュージシャンたちが一同に集結した珠玉のアルバム CODA、完成しました。
今回プロデュース及び全曲の作曲・編曲・作詞を納浩一が担当
1998年のソロ作品「三色の虹」を更に純化、進化させた、オサム・ワールドを是非堪能ください!