ベーシストのための理論入門講座 マイナーダイアトニックについて
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ベーシストのための理論入門講座の第4回です。
今回は、マイナーダイアトニックについてお話ししたいと思います。
では最初に一つ、質問しましょう。

マイナーの曲でもっとの有名なものの一つが、「Autumn Leaves(枯葉)」ですよね。
この曲の何カ所かに、「D7」という、トニックであるGmに解決する、いわゆるドミナントのⅤ7が現れます。
例えばAセクションの6小節目に出てきますし、リピート回の同じ場所、すなわち14小節目にも出てきます。
基本的には、その2カ所で現れるD7は、前後が同じコード進行のなかで現れるのですから、普通に考えれば同じスケールと考えて差し支えないはずですよね。
ところが残念ながらそういうわけにはいきません。「えっ?」と思われた方に、さて質問です。

問:「枯葉」の6,及び14小節目のスケールは何でしょう?
この問いに、「ミクソリディアンでしょ?」という人は、その理論の知識がメジャーダイアトニックで止まっている証拠です。
確かにメジャーダイアトニックの時は、Ⅴ7のスケールはミクソリディアンでした。
でも、そこで理論の知識が止まっている人は、「7thコードを見たらミクソリディアンと思え!」というような、めちゃくちゃ大雑把な考え方でジャズのアドリブを乗り越えようとしているのでしょう。

残念ながら、枯葉の6,14小節目でD7のミクソリディアンを弾けば、かなり残念なフレーズになってしまいます。これは0点です。
次に、「だって枯葉はマイナーの曲だからⅤ7はハーモニックマイナー・パーフェクト5th ビロウ」(以下、「Hmp5↓」)と考えた人は、マイナーダイアトニックについての知識がかなりある人だといえます。
もちろん、ソロが始まってしまえばそれで良いのですが、すくなくともメロディがあるテーマの時は、それでは50点にしかなりません。
ではメロディを考察してみましょう。

6小節目のメロデイは、D、E、F#です。
14小節目のメロディはA、Bb、Cです。
あとで詳しく解説しますが、先ほども言いましたように、マイナーダイアトニックの場合、そのⅤ7のスケールは、基本的にはHmp5↓です。

そのスケールノートを書き出すと、D、Eb、F#、G、A、Bb、Cです。
すると、14小節目の音はすべて当てはまりますが、6小節目のEとF#の音はありません。
メロディにその音がない場合、そのスケールが使えないことはいうまでもありませんね。
たとえば、先ほど0点だといった判断を例に挙げましょう。

このD7に対してミクソリディアンを使ったとすると、そのDのミクソリディアンにはBの音があります。
Gマイナーの曲で、そのマイナーのサウンドを出す最も大事なBbの代わりに、Bの音を使えば、これは全くのGメジャーのサウンドになり、とても明るい響きがすることは、楽器がなくても想像できますよね。

そしてそれが如何に残念な結果になるかということは、先ほども言ったとおりです。
ということで、メロディーの音が含まれないスケールは、そのメロディの場所では使えないというのが原則です。(ただその原則が当てはまらないような例外が発生する曲も多々ありますし、音楽はそんな杓子定規に考えない方が良いとは思いますが)
答えをいうと、14小節目はHmp5↓で良いのですが、6小節目はそれ以外のスケールになります。

ということで、今回は、「なぜマイナーのⅤ7のスケールはHmp5↓なの?」や「枯葉の6小節目のスケールは何?」といったことをお話ししましょう。

マイナースケールには3種類ある

メジャーダイアトニックと違って、マイナーダイアトニックには3種類あります。
これが実に重要なことで、特にアドバンストなジャズのスケールやコード進行では、このマイナースケールから発生したアイデアがふんだんに利用されています。
ではその3種類とは何でしょう?

小学校や中学校でしっかり音楽を勉強した人(いや、普通に、ですかね?)ならすぐ答えられると思いますが、この時点で「?」という人は、相当音楽の授業をサボった人かもしれませんね。

あるいは音楽を取らずに美術を選択したとか。いずれにしても、いまベースを一生懸命練習しているというのは、なかなかに皮肉な運命かもしれません。

マイナーには以下の3種類はあります。

ナチュラルマイナー(=自然短音階=Aeorian)(譜例1)
ハーモニックマイナー(=和声的短音階)(譜例2)
メロディックマイナー(=旋律的短音階)(譜例3)
ではそのそれぞれの違いについて解説します。

1)ナチュラルマイナー

これは、第2回の平行調のところでもお話ししましたが、メジャーダイアトニックスケール上の6番目の音から始めたスケールで、その意味では、構成音はその平行調であるメジャーダイアトニックスケールと同じということです。
ここで書いているCマイナースケールでいえば、Ebのメジャーダイアトニックスケールと構成音が同じ。調号でいうとフラットがEb、Ab、Bbの3箇所に付いたスケールです。

●ナチュラルマイナー における各コードの機能
それぞれのコードの機能についてお話ししておきましょう。
メジャーダイアトニックと同じで、最も重要な3和音、Ⅰ、Ⅳ、Ⅴはそれぞれトニック、サブ・ドミナント、ドミナントとなるのですが、残念ながらナチュラルマイナー上に発生するⅤのコードは、譜例1)のように、Ⅴ7とならずⅤm7となってしまいます。すると、ドミナントモーションを起こす重要な和音、トライトーン(増4度音程)がその中にないので、Ⅴ7→Ⅰmというような強い解決感が生まれません。すなわちドミナントとしての働きが出来ないということになります。
ですのでその機能のところに、括弧付けで「(D}」と書いているわけです。
その他のコードの機能ですが、これは第3回の代理コードのところでお話しした事を思い出してください。
bⅢMaj7は、Ⅰm7とほぼ同じ構成音といえますので、トニックの代理です。
Ⅱm7(b5)、bⅥMaj7、bⅦ7は、その中に、スケールの6番目の音があるので、サブ・ドミナントの代理となります。

●ナチュラルマイナー における各コードのスケール
ナチュラルマイナーは、平行調であるメジャーダイアトニックスケールの6番目の音から始めたスケールといいましたね。
ということで、そのスケールも、メジャーダイアトニックと同じです。
Ⅰm7 :Aeorian
Ⅱm7(b5):Locrian
bⅢMaj7 :Ionian
Ⅳm7 :Dorian
Ⅴm7 :Phrygian
bⅥMaj7 :Lydian
bⅦ7 : Mixo Lydian

2) ハーモニックマイナー

1)のナチュラルマイナーで発生した、Ⅴのコードにトライトーンが出来ないという、コード進行を作る上での大問題を解決するために出来たスケールです。
このCマイナーのキーの場合、ドミナントモーションはG7→Cm7となりますから、トライトーンはFとBの音で作られます。
ということで、ドミナントによる解決感を出すためには、ルートのCの音に半音進行するBの音が必要になるということです。

ですので、Bbの音を半音上げてBにしたスケール、すなわちG7というトライトーンを持ったⅤ7を作るために、ハーモニー的な手を加えたスケールということで、ハーモニックマイナーという名前(日本語では和声的)となっています。

●ハーモニックマイナー における各コードの機能
各コードの機能ですが、BbがBに変わることによって、譜例2)のように、いくつかのコードが変わります。が、大事な部分は変わらないといえます。
Ⅰ、Ⅳ、Ⅴに関しては、Ⅴ7がドミナントの働きを持てるようになったくらいで、トニックやサブ・ドミナントはそのままです。
またbⅢMa7(#5)も、なんか見慣れないハイブリッドは感じのコードネームになりましたが、Ⅰm△7との構成音がほぼ同じなので、トニックの働きは変わりません。
Ⅱm7(b5)もbⅥMaj7も、6度の音が入っているので、サブ・ドミナントの代理の働きは変わりません。

ただⅦdim7に関しては、その中にFとBによって出来るトライトーンが発生したので、ドミナントの働きに変わります。
●ハーモニックマイナー における各コードのスケール
ハーモニックマイナーの場合、7つあるスケールで、スケール名が付いているのは次の2つだけです。
Ⅰm△7:ハーモニックマイナー
Ⅴ7  :Hmp5↓

3) メロディックマイナー

2)のハーモニックマイナーを一度ベースで弾いてみてください。
すると、6度のAbと7度のBの間のインターバルが、増2度(長2度より半音広がった音程、半音3個分)となり、どうもメロディ的には中近東的なサウンドになってしまいます。

これではなかなかいいメロディが造れないということで、さらに修正を加えて、Abの音を半音上げてAとしたのが、このメロディックマイナーです。
すなわち、メロディ(日本語で旋律)の事を考えて手を加えられたスケールということですね。
ここで注意してもらいたいのは、クラシックや一般のポピュラー理論では、このメロディックマイナースケールを上行・下降する場合は、上行の時はG→A→Bと上がりますが、下降するときはB→Ab→Gというように、ハーモニックマイナーになります。でないと、下降の時にマイナースケールのサウンドが出ないからということなのですが、ジャズの場合はそれも良しということで、上行も下降もこのメロディックマイナーの音を使うことにしました。

すなわち上行ならG→A→B、下降ならB→A→Gとなります。
この、上行も下降もメロディックマイナースケールを使うスケールを特別に「ジャズマイナー」と呼びます。

●メロディックマイナーにおける各コードの機能
機能は、そのコードネームが変わらないⅠm△7、bⅢMaj7(#5)、Ⅴ7は変わりません。
Ⅱm7はメジャーダイアトニックのⅡm7と同じコードですので、サブ・ドミナントの代理となりますが、6度の音がナチュラルなので、マイナーダイアトニックのサブ・ドミナントとしてもサウンドは持ちません。

Ⅳ7も、Ⅱm7と同じく、サブ・ドミナントの働きですが、同じ理由で、マイナーダイアトニックのサブ・ドミナントとしてもサウンドは持ちません。
Ⅵm7(b5)は、構成音を見ると、A、C、Eb、Gとなり、Cm6の転回型といえますから、これはトニックの代理となります。
Ⅶm7(b5)は、その中にBとFからなるトライトーンがあるので、ドミナントの代理となります。

●メロディックマイナー における各コードのスケール
Ⅰm△7 :Melodic Minor
Ⅱm7 :Dorian b9th
bⅢMaj7(#5):Lydian augument
Ⅳ7 :Lydian b7
Ⅴ7 :Mixo Lydian b13
Ⅵm7(b5)  :Locrian ナチュラル9
Ⅶm7(b5) :Super Locrian
bⅦ7 : Altered

●リディアンb7とオルタード
ここで、注目してほしいのは

A) Ⅳ7のスケール
CのメロディックマイナーのおけるF7に当たりますが、その構成音を並べると
F、G、A、B、C、D、Eb
です。
これが上にある、リディアンb7という、ジャズでは頻繁に使われるスケールです。
ですから例えば、譜面に、その使用可能なスケールが「F7 Lydian b7」と書かれてあるような場合は、「ほう、だったらちょっと、Cのメロデックマイナーを弾いてやろう!」なんてことが可能なわけですね。
とにかく、リディアンb7というスケールは、このメロディックマイナースケールから発生したスケールということです。

B) Ⅶm7(b5)あるいはⅦ7のスケール
CのメロディックマイナーのおけるBm7(b5)と、その横に書いてある、B7ですが、
この構成音を並べると
B、C、D、Eb(=D#)、F、G、Aです。
この並びのスケールが、Bm7(b5)としてつかわれることはほぼなく、まず間違いなくB7として現れますが、これもジャズで頻繁に使用されるオルタードスケールです。
先ほどのF7と同じように考えれば、譜面に、その使用可能なスケールが「B7 Altered」と書かれてあるような場合は、「ほう、だったらちょっと、Cのメロデックマイナーを弾いてやろう!」ということも可能なわけですね。オルタードスケールというのは、その2番目の音から始めれば、メロディックマイナースケールとなるわけです。
これらのことをまとめると、
Cメロディックマイナー=Fリディアンb7=Bオルタード
ということですね。

とにかく、オルタードというスケールも、このメロディックマイナースケールから発生したスケールということです。

●マイナーダイアトニックのドミナントモーション
最後に、マイナーダイアトニックのドミナントモーションについて解説しておきます。
譜例4)を見てください。
トライトーンの2音がそれぞれどのように動くことによって、ドミナントモーションの解決感が出るかは、メジャーダイアトニックの時の、G7→Cの解決の時にお話ししました。

それをそのままマイナーダイアトニックにあてはめると、譜例4)のあ)のようになります。
すると、B→Cという半音進行はいいのですが、もう一つのF→Ebというのが全音進行になってしまいます。
これでは、B→CとF→Eという2つの半音進行が出来るメジャーダイアトニックにおけるドミナントモーションより、解決感が弱くなってしまいます。
そこで、い)のように、ドミナント7thコードに、b9thのテンションを入れることによって、Ab→Gという半音進行を作ることによって、メジャーダイアトニックの時と同じような、強い解決感(=ドミナントモーション)を生むようにします。

またそのAbの音は、解決先のルート、Cから見ればb6度となるので、そのテンションノートを」訊いただけで、普通人の耳のは、「ああ、このドミナント7thコードはマイナーに解決するんじゃないかなぁ」という雰囲気を醸し出すのです。

そのため、マイナーのドミナントモーションの時には、
Ⅴ7(b9)→Ⅰm
という形となることが多いのです。
ということで、今回はマイナーダイアトニックのお話でした。

また次回もお楽しみに。

CODA /納浩一 - NEW ALBUM -
納浩一 CODA コーダ

オサム・ワールド、ここに完結!
日本のトップミュージシャンたちが一同に集結した珠玉のアルバム CODA、完成しました。
今回プロデュース及び全曲の作曲・編曲・作詞を納浩一が担当
1998年のソロ作品「三色の虹」を更に純化、進化させた、オサム・ワールドを是非堪能ください!