トモ藤田さん「ズバリ! この人に聞く。あなたが求める理想のベーシストとは?」
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サロンの名物コーナー、世界で活躍する日本人ミュージシャンに直撃インタービューするという、題して、「この人に訊く。あなたがベーシストに求めるものは?」です。

今回のゲストは、僕も卒業した、アメリカ・ボストンにあるバークリー音楽大学で、なんと教鞭を執りながら、日米を股に掛けて活躍するギタリスト、トモ藤田さんです。

彼とは、僕が京都にいた頃からのお付き合いで、さらにいうと、彼がバークリーの奨学金を取るためにバークリーに送った、そのデモテープでベースを弾いたいるのが、この私でした。

バークリー時代も一緒にバンドをやったり、また彼がその後、バークリーの教授になってから、初めて日本に凱旋ツアーで帰国したときも、一緒に演奏しました。

そんなこんなで、本当に懇意にさせてもらっています。
彼が教えたバークリーの生徒には、なんとあのジョン・メイヤーもいます。

いやいや、偉くなったものです。

彼は自分のアルバムで、ウィル・リーやスティーブ・ガッド、スティーブ・ジョーダンらの一流ミュージシャンをゲストに呼んで録音したのですが、その辺りも是非お伺いしたいということで、Skypeによる国際通話でのインタビューとなりました。

これまでのインタビューに負けず劣らずのおもしろいお話が聞けました。

しかも旧知の仲ということで、なんと30分近くにも及ぶロングインタビュー、文字数でいうと1万文字を超えるような内容になりました。

ではお楽しみください。よろしくお願いします。

前半

アメリカのコロナ事情

納(以下O):はい、ではトモ藤田さん、よろしくお願いします。

トモ藤田(以下 F):はい、よろしくお願いします。

O:そちら、ボストンですよね?

F:はい、そうです。

O:まずコロナのお話をお伺いしたいのですが、一体、状況はどうですか?

F:始めはね、日本とか中国が大変なことになっているっていうだけで、アメリカはそれほど警戒していなくて、で、急に、3月の始めだったかな、2月の終わりだったかなぁ、そういう噂が入ってきて、「気をつけないといけないよ」っていうような話になってきたんですよね。

で、3月の中頃くらいに、バークリーから、もうそろそろ学校を閉めて、オンラインで授業をしなければならないっていうような指令がきたんですよね。

その辺りから、ニュースを聞いていても、もうみんな警戒してましたから。

日本は始め、結構たいへんだったでしょ?

O:そう、例のクルーズ船の一件があったからね。

F:ああいうのをアメリカはもうすでに知って、アメリカは反対にもっとすばやい動きをしているから、僕は結構うまく押さえ込むんだろうなって思ってたんですよ。

O:はあはあ。

F:学校も早く閉めるって決めていたし、そういったニュースもやっていたので。

で、そう思っていたら、ニューヨークとかシカゴとかロサンジェルスとか、そういったところは、クラブとかレストランとかがいっぱいあるのに、そういった人たちは結構、気にしていなかったと思うんですよね。

O:あ〜。

F:ほら、あのフルー(アメリカではインフルエンザを「フルー(Flu)っていうんですね。)、あ、インフルエンザみたいに、「まあ、そのうち治るだろう」みたいな感じで思っていたんですよね。

甘かったんですよね。それが急に感染が増えだして。

僕が奥さんと毎日、その傾向を報告しているようなサイトを見ていると、アメリカの感染者の数が、もうどんどん増えてきたんですよね。

O:はあはあ。

F:始めは中国より少なかったのに、逆転して中国より増えてしまって、いまやトップになってしまってますよね。

O:ボストンも結構、コロナの影響は大きいの?

F:いや、ボストンはねぇ、比較的ニューヨークよりも小さいかな。ボストンっていうのは、みんなボストンの中(ダウンタウン)に働きに来ているっていう感じで、まあ、東京みたいなんですよね。なので、僕のように、みんな郊外に住んでいるので。僕はボストンまで40分くらいの郊外なんで。僕の住んでいるところは、大丈夫っていうか、まあ、ちょっと安心できるっていうか。

それでももちろんマスクしているし、家の外に出たら手を洗ったりなんとことを細かくやってますよ。

O:当然バークリーは閉鎖でしょ? 授業もオンラインですよね?

F:はい。3月の12か13日くらいに、そういった警告をバークリーからもらって、で、その次の週が春休みだったんですよ。実はそのときに僕は日本に行く予定だったんですよ!

O:へぇ〜!

F:なので、それはキャンセルになって、で、23日からは完全にすべてオンラインになったんですよ。

O:ほおほお。

F:始めはやっぱり、先生でもオンラインをやったことがない人が多かったんですけど、ちょうど良かったのは、その春休みの間にみんなトレーニングしたっていうか。

僕はもう、すでにオンラインを経験していて、オンラインのやり方は判ったいたので問題なかったんですけれど。

ま、とりあえず、コロナの状況は、ニューヨークとかの大都市はもう無茶苦茶で、今も大変ですけれど、ボストンはまあまあ普通というか。

僕の場合は、郊外なので、比較的大丈夫っていう感じですかね。

アメリカのフリーランスに対する支援状況

O:あとお伺いしたいのは、ミュージシャンとかフリーランスに対する支援なんですけど、その辺りはアメリカはどうなんですか? もう、日本は惨憺たる状況なんですけど。

F:アメリカはねぁ、その街のよって、その都市によって違うんですよね。

O:ということは、国じゃなくて、地方自治体が主導してるってこと? 州ごとに。

F:そうみたいですね。

例えばね、これ面白い話なんですが、僕の娘はダンスをやるんですけれども、ちょうど、そのダンスのための服屋さんみたいなところでバイトしてたんですよ。で、その収入が、1週間で3〜4万円くらいだったんですよ。ちょこっとだけですけどね、そのパートタイムで。

で、それがどうなったか! なんと、その収入プラス600ドルもらえるようになったんですよ。しかも毎週!

O:え〜、毎週!?

F:そう、毎週!

O:それは凄いなぁ! それ凄い!

F:そう。

O:だったらそっちの方がええやん!

F:そうなんですよ! だから、面白い話が、うちに奥さんが笑ってたのは、うちの娘、パートタイムで3,4万くらいの収入で、それプラス600ドルなので、税金を引かれたとしても、週に700〜800ドルくらい入ってくるんですよ。

O:へぇ〜! 凄い、リッチやん!

F:ただそれは7月までなんですよ。

O:ふんふん。で、それってフリーターだからもらえるの? あるいはダンサーだからもらえるの?

F:いや、じゃなくて、単純に、収入プラスいくらって考え方なんです。

O:あ〜、その人の仕事が何であろうが。

F:そう、仕事が何であろうが、今までの収入プラスいくらっていうのが、そう、600ドルっていうのがあるんですよ。

O:もちろん藤田君の場合は、いまでもバークリーからの固定給があるから、特にそういう特別なサポートみたいなのはないんですよね。

F:それはないんですけれども、多分一括で、ちょろっともらえるような気はするんですよ。

(後日、連絡をいただき、一括で1200ドルくらいもらえるということだそうです)

O:あの、ミュージシャンはどうなんですか? ミュージシャンのそうな風にもらえるの?

F:ミュージシャンも多分同じだと思います。今までの収入プラスいくらって感じで。

O:ほぉ〜。もちろん、ライブなんて、今は全然できないでしょ?

F:全然だめですね。で、その申告の仕方によってですけど、だから可哀想なのは、ミュージシャンって、アメリカの場合、キャッシュによる支払いでやっている人の場合、申告していなかったら何ももらえないですね。

O:そうですよね。じゃあ、そうなると失業保険か。

F:そうね、失業保険になるでしょうね。

だからいま、面白い話が、普通に仕事をしている人は、意外に仕事がなくなっても、別に、収入的には同じくらいっていうか。反対に収入の少なかった人は、それよりプラスになるっていうようなことになっているのが、面白いですよね。

O:そういうシステムは良いですねぇ。

F:それがねぇ、納さんも投稿されてましたけど、それが日本はマスク2枚と。

O:そうそう、それとあと、一回きりの10万円と!

F:いま、我が家ではラインが出来るので、ラインで京都にいる母親と話してたら、始め日本政府は30万くらいくれるって言ってたのが、年寄りとかはその手続きが大変だってことで、いきなり10万に減ったって言ったました。

O:ハッハッハッハ! ま、いろいろ事情はあったんですが。

F:いや、それ聞いて、こちらの感覚からすれば、「え、だったら毎月10万円もらえるの?」って言ったら、「いやいや、10万円、一回きり」やって! 「それ、せこいなぁ!」って。

O:ハッハッハ、ほんまですよ。

F:ほんま、日本はきついですねぇ。

O:そう、ほんまきつい。でもこれまでに日本政府はいっぱい金を使ってきたから、もう支援できるような金がないんですね。アメリカはいままで、経済が良かったじゃないですか。

F:そうねぇ。

O:だからそれくらいの支援してもまだ、持つでしょうけど、日本はこれまでもあかんかったからね。しかもオリンピックまで飛んでしまったから、もう三重苦、四重苦って状況。もう国にお金が全然残っていない。

F:あ、そう…。

O:ま、判りました。じゃあ、コロナの話はこれくらいにして、本題の方に。

アメリカの一流のプレーヤーについて

本題はですね、ベーシストに何か言いたいこと。

F:言いたいこと!?

O:ま、言いたいことというか、例えば、「こんなベースは好きだ」とか「一緒に演奏しやすい」

、またアマチュアの人は「こういったことにちゃんと気をつけて演奏してほしいな」といったような、ベーシストに対してのアドバイスを、このインタビューで皆さんにお伺いしているんですが。

特に藤田君は、ウィル・リーとか、スティーブ・ガッド、スティーブ・ジョーダンとやってるじゃないですか。

F:はいはいはい。

O:どうですか、ああいう人たちと一緒に演奏したら?

F:ああいう人たちは、シンプルに弾く時は本当にシンプルに弾くし、音数が多くなっても、その中でよく考えてるんですね、音楽の展開の仕方みたいなものを。

O:うんうん。

F:なので、例えば急にダブルタイム(日本語で言う「倍のテンポ、いわゆる倍テン」)になったり、急にカットタイム(ダブルタイムの反対で、半分のスピードという意味)になったり急にファンクになったり、といった展開になったりします。

でもとにかく、何が凄いかっていうと、彼らは一応に、シャッフルのブルースが出来ているってところなんです。

O:あー、はいはい!

F:シャッフルのブルースが出来てるから、例えばスラップをやっても、シャッフルのフィールがそのスラップの下に付いているので、薄くならないんですね。

O:ほぉ。

F:あと、やっぱりジャズがちゃんと判っているというのもありますね。

たとえばフュージョンという音楽を考えてみると、僕もフュージョンという音楽が好きだったんですけれども、それはジャズかブルースかのどちらかがちゃんと出来ていなかったら、なかなか2つとか3つの音楽をうまく混ぜられないと思うんですよね。

で、一番やりづらいのは、音数が多くてタイムが弱いプレーヤーですね。

O:あ〜、はいはい!

F:フュージョンっていう音楽はどうしても音数が多くなるじゃないですか。

O:はい、どうしても、ね。

F:で、音数が多いというのがまたかっこいいんですけれども、音数が多くてリズムが頼りないのが、一番やりにくいんですよね!

O:あ〜あ〜あ〜! それは邪魔やね。

F:極端に言ったら、リズムがめちゃくちゃタイトで、ルート・フィフスしか弾かない人の方が、一緒やりやすいですよね。

O:ん? ルート・フィフス?

F:ルートと5度だけ弾くっていうことですね。

O:ああ、なるほどね。

F:うん、極端に言うとね。そのルート・フィフスだけでグルーブしてもらった方がやりやすいです。そこにクロマティックが入ってきて、裏か表か判らないようなリズムになったら、やっぱりこっちはやりにくいですよね。

O:そうですね。う〜ん、わかるわ!

F:それっ難しいとこなんですよね。だから僕が言いたいのは、だからといって音数が多いということを批判しているわけではないんですよね。たとえばソロが凄くうまいというような人は、もちろん音数が多くて良いんですよね。その場合は逆に、僕の方がリズムギター的に楽しめるわけだから。

O:ああ、はいはいはい。

F:僕がリズム楽器として楽しめるってことですよね。そういう場面もありですし。

だからその、中途半端が一番やりにくいってことですね。

バークリーの教授陣

O:今バークリーにもいっぱい良い先生がいると思うんですけれども、ま、もちろんボストンにもいっぱい良いミュージシャンがいると思うんですけれども、「この人とやって凄く良かった」みたいなベーシストはいますか? もちろん名前を出してもらって良いんですけれども。「このベーシストのこんなところ」みたいなお話をお聴かせいただければと思うんですが。お勧めの人いますか?

F:そうですね、ダニー・モリスっていう先生、覚えてますか?

O:ダニー・モリス? いや、覚えてないですね。

F:ダニーの良いところは、やっぱり、あのダニー・ハサウェイのようなR&Bのグルーブとか、ブルース、ファンクがうまい人なんですけれども。

O:ちなみに黒人の人ですか?

F:いえ、白人なんですけれども。

O:へぇ〜!

F:凄く音数が少なくてね。で、彼はPベース(おそらくプレシジョンベースのことかと思います)を使ってるんですけれども、もう20年くらい弦を換えていないそうです。

O:ハッハッハッハッハッハッ! マジ?

F:そう、フラットワウンドで、ずっと換えていない! それで有名なんです。

「絶対変えへんから!」って言ってます。

O:凄いなぁ!

F:もうだから、モコモコの音で弾いてるんです。

O:いや〜、でもわかるわ、その気持ち。

F:でも凄いシンプルなベースを弾くからとてもやりやすいんです。そんな派手じゃないし。

O:そうですか。その方以外に、誰かいますか?

そういえば、ジョン・パティトゥイッチが教えてるって聞きましたけど。

F :教えてるみたいですね、僕は会わないけど。

O:そうですか、まあ、バークリーも人が多いからねぇ。

F:あともう一人いるでしょ。ニューヨークに住んでる人で、ほら、ヨガも教える人。

O:ヨガも教える? いや〜、判らないなぁ。

(このベーシストが誰かご存じの人は教えてください)

ま、とにかく今バークリーは人が多いですよね。

F:多いですねぇ。

O:いま、バークリーでは何人くらい教えてるんですか?

F:生徒ですか。いま2日間教えていて、その2日間で15〜6時間くらい教えています。

人によって、1時間の人もいれば50分くらいの人もいます。30分位って人もいますね。

O:全部、プライベートレッスンですか? マンツーマン?

F:はい、そうですね。で、全部で30人くらいいるかな。

O:じゃあ、その2日以外は何をしてるんですか?

F:僕は結構レッスンが好きなんで、例えば日本にいる人からのテープレッスンをやったりしてますね。あとはSkypeレッスンのやってますね。

O:ああ、こういう感じでね。

F:そうそう、Skypeレッスン。

僕はほんとに、結構、レッスン関連が好きなので、やるんだったら細かくやろうと思って、で、去年の3月くらいからオンラインでのレッスンを始めたんですね。

O:ほおほお。

F:オンラインっていうのは、Skypeではなくて、10分、15分くらいの、すでに作ってあるレッスンがいっぱいあって、それを月に一人、$9.99、日本円でいうと1000円くらいですかね。

で、僕は英語でやっているんで、70カ国くらいから来るんですよ。

O:へぇ、それは凄いねぇ!

F:しかも毎日増えているので、それはありがたいですね。

僕は、ちょっと変な夢があって、オンラインでレッスンして、それでツアーをしようと思ってるんです。

O:えぇ?

F:要するに、オンラインで収入は安定するから、ツアーで多少マイナスがあっても平気で回れるという感じですね。ハハハハハ!

O:そうね、いまやなにかそういう、別のしっかりした収入がないとね。

F:そう! ライブだとギャランティーというのはもう、なかなか無いと思うので。

O:でもいまや、日本にツアーで来ても、結構お客さん、入るんじゃないの?

F:まあまあ、入りますけどね。

O:ねえ、最初初めて藤田君が日本に来て、僕と一緒にやったライブなんて、お客さん、3人くらいだったけどねぇ!ハハハハハ!

F:いやいや、あれは素晴らしい経験でしたよ!

O:え、そう?

F:そうそう。結局ね、何もしないと何も起こらないってことが判ったんです。

O:ああ、そういうことね!

F:僕は、ジャズライフなんかに広告を出しただけで、お客さんは来てくれるだろうって思い込んでいた訳なんですよ、まだ考え方が若かったから。

O:ですよね。判りました。では次に、これが一番訊きたかったことなんですが、スティーブ・ガッドとスティーブ・ジョーダンの違いについてお話ししてもらえますか?

後半

後半では、スティーブ・ガッド、スティーブ・ジョーダン、バーナード・パーディー、ジェームス・ギャドソンをゲストに迎えて録音されたアルバムでの、彼らとのセッションの模様や、それぞれのドラマーの特徴等のお話、ギャラの交渉にまつわりおもしろいエピソードなどをお話いてもらっています。

ということで、後半もお楽しみください!

スーパードラマー達

1) スティーブ・ガッド

F:スティーブ・ガッドは一発で決めていく人なので。

O:ほお、一発で決める?

F:一発で決めるというのは、演奏を決めるのが早いんですよね。

O:へぇ〜!

F:僕のアルバム(「Pure」2010年発表)の1曲目に「Kyoto」という曲が収録されているんですが、それをやったときに、ラテンフィールでやったりいろんなフィールでやったりとか、またブラシでやってみたりとか、いろんな感じを試してみて、彼が「どれが良い?」って訊くんですけど、そんなの、どれもいいに決まってじゃないですか!

で、僕が「う〜ん…」って迷っていたら、彼が「歌物みたいにやろう!」っていうことになって、結構静かな感じでやったんですよ。

で、そんな感じでやってみて、1テイク目が終わったんですけれども、僕はその前にやっていたブラシでの感じが好きだったので、「ブラシでもやってくれ」って言ったら、「いや、今のがテイクだ!」って。

O:ハハハハハ!

F:そう、もうやり直さないんです。

O:あ〜。

F:で、ウィル(ウィル・リーのこと。スティーブ・ガッドやスティーブ・ジョーダン、バーナード・パーディは、すべて彼が声を掛けてくれたそうです!)が、「トモ、言うのを忘れていたけど、スティーブ(・ガッド)はすぐ決めてしまうんだよ。」って。だから「あんまり曲を練習しない方がいいよ。」って。

O:へぇ〜。

F:さっき話したみたいに、いろいろグルーブやフィールを試してみて、で、1テイク目が終わったでしょ。で、ブラシが好きだって言ったら、「だったらこの演奏の上にブラシをかぶせてもいい」って言ってくれたんですよ。

で、「じゃあ、一回聞いてみる?」って尋ねたら、「いや、聞かなくていい。」って言うんですよ。

O:ほお。

F:彼はデモも聞かないんですよ。

O:へぇ〜!

F:譜面を見せて、「こんな感じで」って言って、そのまま一回録音したら、それでOKですから!

O:凄いなぁ、ハハハハハ!

F:だからあのアルバム(「Pure」)の、ガッドがやってる3曲って、彼が8時45分くらいにスタジオに入って、11時にはもうスタジオ、出ちゃってましたよ。

O:3曲録って! ハハハハハ!

F:そう! 2曲目なんて、テーマを一回だけ演奏して、「はい、じゃあ行きましょう!」って言って、その一発で録ったんですから。

O:へぇ〜。

F:でも反対に良かったのは、もう、間違っているとかそんなことは問題じゃなくて、そういうことを考えているチョイスがなかったってことですね。「決めなきゃ!」って感じで。

O:はぁ…。

F:だから、2曲目3曲目はもう、一発で決めましたね。

O:へぇ〜、さすがやね!

2) スティーブ・ジョーダン

F:で、スティーブ・ジョーダンはなにが凄かったかっていうと、1曲目を録るときに、ある程度のところからフェイドアウトしようと思っていたんですよ。そしたら、彼、もう汗かきまくってずっとグルーブしてる訳ですよ。(その曲は「The Good Life Extended Version」だそうです)

O:あ〜〜〜!

F:で、「これは止めたらもったいないな!」と思って、彼に一緒について行って演奏したんですよ。

で、彼はやっぱり、歌物っていうのを意識してやっているんですよね。だから、最初に僕が、メロディを弾いて録音しようとしたら、「いや、それは止めて、まずは伴奏だけにして、歌物みたいにやらないか?」って言うんですよね。

O:はあはあはあ。

F:だからどうしたかっていうと、僕はリズムギターを弾いて、それにウィルのベースとスティーブ・ジョーダンのドラムスでうわーっとやって、それだけで8分やったんですよ!

で、ずっとやって、最後はお互いに顔を見ながらフェイドアウトしたんですよ。

もうまさにライブって感じでした!

O:ほうほう。

F:で、2曲目は結構シンプルにやったんですけど、それもやっぱり2回くらいでもう決めちゃいましたね。

3曲目は、事前に譜面に、盛り上げる所とかを書き込んでたんですよ、バラードだから。

でもやったら、そんなの全然見てないんですよ。で、「ああ、この人、完全にフィールでやるんだな」って思ったから、だったら「もう譜面、見ないで」って言って、フィーリングだけでやったんですよね。そしたらそれが良かったんですよね。

O:ふーん。

F:それもね、途中で、なんか変なリズムって言うか、なんかヘンテコなことをやり出したんですよ。

O:へぇ。

F:スリップっていうか、変なところにアクセントを入れたりして、僕はもうちょっとでこけそうになったんですよ。でもこけたらダメだなと思ってついていったんですが、彼は完全に遊んでいただけだったんです。でもそれがあまりに良かったんで、「もう一回やってくれ!」っていったら、「今のテイク以上にうまくは出来ないよ」って言われたんですよ。

O:ハハハ。

F:でもやってくれたんですよ。

ということで、その二人の違いって言うと、スティーブ・ガッドは、もう一発で決めて「これ!」って感じなんですけど、スティーブ・ジョーダンは汗かきながら結構やってくれる。

O:ふ〜ん。

F:その辺りが違いましたね。

あとびっくりしたのは、スティーブ・ガッドはヤマハのドラムスが好きなので、ヤマハのドラムセットをちゃんと用意したんですよ。実は「スネアは持ってきてください」ってお願いしたんですが、ドラムスティックとブラシだけで登場されました! で、同じように、スティーブ・ジョーダンの時も、良いセットを用意しておいたら、彼は、そこのスタジオにあった、 ラディック(Ludwig)のボロボロのドラムセットがいいって言うんですよ。

O:あ〜、彼らしいなぁ。

F:そう、もうボロボロですよ! それをまた一から組み立ててね、それを使ったんですよ。

O:へぇ〜! でもそれぞれの音になっちゃうんですよね。

F:そうそうそう。

3) バーナード・パーディー

で、バーナード・パーディーはまた違ってて。

O:アッ、バーナードも入ってたっけ?

F:そうそう、真ん中の3曲は彼が叩いてます。

O:そうかそうか、バーナード、入ってたっけ! それは失礼しました!

F:そう、それでバーナードがおもしろかったのは、あの人、ニュージャージに住んでいるので、レコーディングの時に「ここのスタジオに来てくれ」って言ったわけですよ。で、来たら、なんか「話が違う!」って僕に言うわけですよ。なんかちょっと怒ってるんですよ。

O:ほう。

F:「なんや、このおっさん! なんでこんな機嫌悪いん?」って。

そしたら、「ドラムセットが無い!」っていうわけ。

O:ほう。

F:無いって、そんなの、ニュージャージーに住んでたら、ニューヨークなんて横浜に住んでいて東京に行くようなもんじゃないですか!

O:ねぇ、ドラムセットくらい自分で持って来いよって!

F:「ドラムセットって、それどういう意味?」って訊いたら、「俺が行くところには必ずドラムセットが用意してある!」って。「そんなこと、知らんわ!」ですよ。

まあ、けんかにはならないけど、僕も焦りましたよ! 「そんなん、知らんがなぁ!」って。

そんなことで結構機嫌が悪くて、、で、「今からスープを買ってくるから、その間にドラムセット、作っておいてくれ!」って言われて。で、またそこにあるセットを作ったら、これがまた文句ばっかり言うんですよ、「このセットは良くない良くない」って。

で、ここからがおもしろいところで、機嫌が悪かったのに、僕がブルースを弾いたら、彼もブルースが好きなんですね。

O:はあはあはあ。

F:彼もニコニコしてドラム、叩いてるんですよ。

O:ハハハハハ! 機嫌、直ったんやね!

F :そうそう、僕がブルース弾かなかったら、もうコテンパンでしたね。

O:ハハハハハ!

F:もうその後は、凄く気分良かったですよ!

O:へぇ〜! で、パーディーも、やっぱりご機嫌なドラムスを叩いてくれたんですよね?

F:そう、それまでは凄く不機嫌だったのにね。

まあ、そんな感じで、あのアルバムは僕にとって、アメリカン・ドリームのような物だったんですよね。

ギャラの交渉

O:ねぇ! で、ベースはすべてウィルですよね?

F:そう。

O:ウィルが、その辺りをすべてコーディネートしてくれたわけ?

F:そうなんです。それもおもしろいのが、ウィルとスタジオの仕事とかをそこそこやっていたんですけれど、あるとき休憩しているとき、スティーブ・ガッドの話が出て、「スティーブ・ガッドはエリック・クラプトンとやっているから、多分僕は一生、彼とは一緒に演奏は出来ないだろう」っていう話をウィルにしたんですよ。そしたらウィルに「そんなこと、やってみないと判らないよ」って正直に言われたんですすよ。

O:ほおほおほお。

F:「Not impossible!」って。「不可能じゃないよ!」って。

「そういうもんなんだったら、じゃあ、ウィル、一度訊いてみてよ!」ってことになったんです。「ああ、訊いてあげるよ」って。そしたら、「スティーブがやりたいって言ってる」って。

O:へぇ〜!

F:「だから電話掛けろ!」って。いや、「メール、ないの?」って訊いたら、「彼はメールなんかないから、電話しろ!」って。

O:ハハハハハ! そうなんや!

F:なので、彼の携帯に電話して、そこからお金の交渉とかスタジオの交渉とかしてね。そうしたら、スティーブも良い人で、なんでもポール・サイモンのリハーサルがあるから、そのときに合わせたらホテル代が浮くから、その日にやれって言われたんですよ。

O:ほうほうほう。

F:でも僕には、もっと違う日に都合が良い日があったんで、「ホテル代は払いますから、その日にやってほしい」」って言ったら、「いやいや、僕が泊まるホテルはめちゃくちゃ高いから、君には無理だ」みたいに言われて!

O:ハハハハハ!

F:ハハハハハ! そんな風に言われて。でもそれからいつも電話がかかってくるんですよ。

O:へえ、ほんとに!

F:で、電話がかかってきて、日程のこととかを相談されるんですよ。

でも大抵、僕がなんかをしてるときにかかってくるんですよ。

O:ハハハ。

F:スティーブ・ガッドからね! なんか、炒め物してるときとか、もう「わ〜っ!」て感じで。

O:ハハハハハ!

F:もう、焦りますよね!

O:ポール・サイモンのリハがボストンであったって訳?

F:いえいえ、それはニューヨークです。レコーディングは全部、ニューヨークでやったんです。

O:ガッドはニューヨークに住んでるんじゃないの?

F:いや、昔はニューヨークだったんですけれども、いまはどこだっかたな、たしかアリゾナのほうに住んでると思います。

O:あ、ほんとに。

F:はい。

O:ちなみに、具体的な額はいいですけれども、高いんですか、あの人達のギャラ?

F:はい、めっちゃ高いです!

O:あ〜。

F:めっちゃ高いので、それを僕が、如何に自分で全部やっているかってことを説明して、理由付けじゃないですけど。そしたら結構安い額でやってくれました。

O:はぁ〜。

F:で、ガッドは安い値段でやってくれて、それはそれで良かったんですけれども、スティーブ・ジョーダンの場合は、まず最初にマネージャーを通して話をしたんですね。で、マネージャーにガッドと同じような金額をいったら笑われました!

「そんな額で彼を使えるなら、そりゃ、誰だってやりたいよ!」って。

O:ハハハハハ! そりゃそうやな!

F:で、僕もう、落ち込んでね。

だって、スティーブ・ジョーダンは「僕とやりたい」って言ってくれて、で、「マネージャーと相談してくれ」って言われたからマネージャーにメールしたら、「こんなギャラでは出来ない!」ってことですからね。

で、スティーブに、「僕、子供もいるし、稼ぎはこれくらいで、これくらいしか出せない」って言ったら、「そんなこと早く言ってくれたら、やるよ!」って言ってくれたんですよ。

O:へぇ〜!

F:それが凄いところで、なんか、ほんとうに。そうしたらマネージャーが、「だったらスティーブに直接、ギャラを払って。俺はいらないから。」って。

O:あ〜、そこを通すとね。

F:ちゃんと話をしたら、みんな、人情深かったですね。始めは「こりゃダメだ!」って思いましたけど。大丈夫でしたね。

O:いやいや、おもしろい話ですね!

4) ジェームス・ギャドソン

F:で、そのあとに、僕、またアルバムを一枚作ったんですが、それはLA録音でね。(「Blue Sky」)

O:ほお!

F:LAで3日間、やってんですけれども、それはベーシストのトラビス・カールトンって知ってます?

O:いや、知らないですねぇ。

F:ラリー・カールトンの息子なんです。

O:ああ、そうですか!

F:そうそう、彼にいろいろ頼んで。LAのミュージシャンとか。で、ラマー・カーターっていうドラマーと、それからなんとジェームス・ギャドソン! ギターは、カーク・フレッチャーとジョシュ・スミスが3曲ずつ。

O:おお! これまたレジェンド!

F:そうそう。ジェームスには4曲、やってもらいました。

O:へぇ〜!

F:彼のシャッフルとかはもう最高でしたね! もちろんファンクも!

6) 大事なこと、それはシャッフルとスイング

O:あ〜、やっぱりねぇ。

F:で、彼と話してみたら、結局彼はジャズドラマーなんですよ。

O:はあはあ。

F:本来はジャズドラマーなんだけど、たまたま、ああいったファンクの仕事なんかをしていたら注目を得たってことなんですね。だから元々はシャッフルとスイングなんです。だからシャッフル、スイングをやらせたら、超凄い!

O:へぇ〜! いや、やっぱりみんなそうなんですよね。ガッドもジョーダンも、パーディーもギャドソンも。やっぱりシャッフル、スイングが出来ないと。

F:そう、みんな、シャッフルが出来て、スイングも出来る。

O:うん、そこやね!

F:だから僕は練習でスイングをやるんですよ、ファンクをやるために。

O:大事やね。

F:そこをみんな知らないんですよね。

O:そうね。

F:みんな、16ビートをやった方が良いって思ってますけど、やっぱりスイングをやらないとだめなんですよ。

O:そうそうそう! いまの若い人は、3連のシャッフルやスイングのフィールがないんよね。

F:ないですねぇ!

O:それでフュージョンをやると、ノリに深みが出なくて、ペターッてなってしまうんですよね。

F:そうそう。やっぱり3連のうねりっていうのが、16ビートに現れてこないと。

そうしないと、16分音符が、なんかこう、パサパサし過ぎて。

O:そうそうそうそう!

F:粘りがないというか、ね。

O:そうなんです!

F:そうでしょ?

O:いや〜、いいねぇ! いい話ですね。これは是非、多くの人に聞いてもらいたい話ですね。

F:はい、是非聞いてもらいましょう!

O:いや、ほんとにおもしろい話をいっぱい聞かせていただきました。ありがとうございました。

F:いえいえ、ありがとうございました!

CODA /納浩一 - NEW ALBUM -
納浩一 CODA コーダ

オサム・ワールド、ここに完結!
日本のトップミュージシャンたちが一同に集結した珠玉のアルバム CODA、完成しました。
今回プロデュース及び全曲の作曲・編曲・作詞を納浩一が担当
1998年のソロ作品「三色の虹」を更に純化、進化させた、オサム・ワールドを是非堪能ください!