クリヤ・マコトさん「ズバリ! この人に聞く。あなたが求める理想のベーシストとは?」
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今回のインタビューコーナー、「ズバリ、この人に訊く! あなたがベーシストに求めるものは?」、久しぶりの日本人、そして直々でのご本人へのインタビューです。
そのゲストはピアニスト、アレンジャー、作曲家、プロデューサーと様々な顔を持ち、そのそれぞれで大活躍中のクリヤ・マコトさんです。
このインタビューは、2020年9月18日、横浜モーションブルーで行われた、アコースティック・ウェザーリポートのライブの本番前に、その楽屋で収録させていただきました。
その前にクリヤさんと僕との繋がりについてお話ししておきましょう。

クリヤさんとは、もう30年のお付き合い。
忘れもしません、1988年、六本木にあった、確か「Woody Bell」というお店(もうとっくの昔になくなってしまいましたが)だったと思うのですが、そこのママさん(これも定かではありません、マスターかも)が、「ちかく、アメリカからとっても面白いピアニストが帰国するんだけれど、彼に電話してみるから、納さん、一度お話ししてみたら?」ということで、電話越しにお話ししたのがその最初。
そんな縁もあって、クリヤさんの帰国後、すぐに僕から声を掛けさせていただきました。その頃はアメリカからの帰国直後ということで、お互い全く仕事がなかったのですが、なんとか食いつなぐために、新宿のカフェバーでのデュオの仕事に、よくお誘いしました。(「Dance」というお店ですが、こちらは今もあるんじゃないでしょうか?)
ある日二人で、今と同じようにガンガン演奏していたら、休憩中に客の若いお兄ちゃんがこちらにつかつかと寄ってきます。「演奏、良かったよ!」なんて声でも掛けてくれるのかと思いきや、「話、聞こえないから、もう少し静かに演奏してくれる?」と。
ま、所詮我々の演奏はBGMだということをしっかり肝に銘じさせてもらいました。

そんなことから始まり、大坂昌彦さん(Dr)、原朋直さん(Tp)、緑川英徳さん(As)からなるX-Bar ユニットというバンドで日本中を旅したときには、こんな逸話もあります。
兵庫の芦屋から始まるあるツアーの時に、僕とクリヤさんと緑川さんはその前日、なにも予定がなかったので、前の日から大阪に移動しようということにしました。
確か2月だったと思うのですが、なんとその日の夜から、関西~関東にかけて大雪の予報が出たんですね。

それをいち早く知った僕は、他の二人に「ちょっと早い目に出ませんか?」ということで、夕方4時くらいに集合して一路関西へ。そのときはクリヤさんの車での移動だったのですが、彼に確認すると、チェーンは持っていないとのこと。
念のため、途中の車屋さんに寄ってチェーンを買って、「もうこれでバッチリ。後は早く大阪に入ってゆっくりしよう。」と出発したはいいのですが、夜の7時くらいに着いた静岡あたりにから、東名高速が全く動きません。そう、雪のせいで、関ヶ原から浜松辺りまで、全面通告止めになっていたんですね。
仕方なく国道1号線に降りた我々、そこからというもの、何時間経っても同じ場所から動かない。前を見ても同じトラック、横の対向車線を見ても同じトラック。そして運ちゃんはみんな寝てるんです。「ああ、こりゃもうだめだ…」という状況。
結局名古屋に着いたのが朝の8時頃。既に12時間以上が経過しているわけです。
でも名古屋を過ぎればなんとかなるだろうと思っていたのが大外れ。

そこからも全く動かないので、短気なクリヤさんは、道路地図(ナビなんてまったくない時代です)を広げて、「これだ!これしかない!」と、何かを決断された様子。
「なになに?」と尋ねると、「この道を行けば、米原に抜けられる」というから、その道を地図を見てみると、なんと「冬季通行禁止」とあるじゃないですか!
しかも大雪の日ですよ。
でもクリヤさんはこうと決めたら動かない人ですし、状況からして、その行程でも使わない限り、夕方の我々のライブには間に合いそうもありません。
仕方なくその道を行ったはいいのですが、雪が50センチは積もっているというような山道で、どこが道で、どこが路肩だかの判別すらつかないような一面の銀世界。
今から思えば、よく遭難して死ななかったもんだと思います。下り坂なんて、まるでジェットコースターに乗っているような、恐怖感、スピード感、高揚感!
ま、なんとか生きて米原に着いたのが夕方4時ころだったのですが、残念ながらそこまで来ても、やはり国道1号線は全く動かず。
諦めた我々3人はそこで、道路脇の工場の敷地に車を停めさせてもらい、一路東海道線に乗って芦屋に着いたのが、本番直前の夕方6時頃。
そしてそこには涼しい顔の大坂さんと原さんが我々を待ち受けていたという、我が人生でも最強・最悪の移動でした。
しかもさらに落ちがあります。
ほんとは僕のアコースティックベースは、後続の大坂さんの車に積んできてもらう予定だったのですが、さすがに彼らも新幹線移動に変更したので、それは無理。
そんなわけで、急遽アコースティックベースを諦め、わざわざエレクトリックベースを我が家に取りに行ってもらって、それを持ってきてもらったはいいのですが、そんな我々の、まさに命がけの努力を知ってか知らずか、芦屋の翌日の大阪のライブでは、本番前にステージにエレベしかないのを見たあるお客さんが「納さん、今日はアコースティックベースじゃないんですね!? あなたはファンを失った!」という捨て台詞を残して、本番前に帰ってしまわれました。
「おいおいおい!」ですよね。
さらに終演後、そのお店のオーナーから、「君ら、アコースティックベースも持ってこないようじゃ、プロ根性ないなぁ…」と言われる始末。
「えっ? そんなにアコースティックベースって大事??」ですよね。
まあ、オーナーの名誉のためにどこのお店かは言いませんが。
こんな珍道中だらけでしたが、若かったんでしょうね、どれもこれも本当に楽しい思い出です。
そのあとも、クリヤさんとは本当に様々な現場でご一緒させてもらってます。
そして今はまさにアコースティック・ウェザーリポート。
クリヤさんとは同じ歳ということもあり、またほぼ同じ時期にアメリカで過ごしたこともあって、本当に馬が合うようです。
前置きが長くなりましたが、そんなクリヤさんとの楽しいインタビュー、20分を超えるような長いインタビューだったのですが、ほっておけばあと30分くらいは止まりそうにないというようなくらい話が弾みました。
ということで、そんなインタビュー、是非お楽しみください。


納(以下O):では早速インタビューを始めたいと思います。
今回のゲストは、ピアニストのクリヤ・マコトさんです。
いつもと同じように、インタビューの内容としては、「ベーシストに求めるもの」や「こういったベースを弾いてくれると嬉しい!」、逆に「こんなベーシストは困る」といったことに関するご意見を、率直にお聞きしたいというものです。
クリヤ(以下K):はい、よろしくお願いします。

O:もちろん、公開はNGって言うような発言は、後で切りますので、まずは思いの丈を存分にお聞かせください。というのも、ベーシスト同士だと、例えば生徒とレッスンをしていているようなときでも、他の楽器のプレーヤーがベーシストに対して、一体、何を求めているのかというようなことが、なかなかわからないんですよね。ベーシストとしてはよかれと思ってやったことが、実は他の楽器の人には非常に迷惑になっているというようなこともあるんだろうと思うわけです。
「それだけはやっちゃダメでしょう!」とか、「そこでそれはないやろ!」みたいな、ね。
あるいは、「この状況で、なんでそれがでけへんねん? 普通ならこうするやろ!」みたいなことが、ベーシストの視点からだけじゃわからないんですよね。
そういったことを、クリヤさんにはピアニストやアレンジャー、バンドリーダーという立場から、あるいはリズムセクションの一員としての視点からお話をしていただきたいと思います。
例えばグルーブの作り方とかね。

K:なるほど。
O:僕はやはりどう頑張っても、基本はベーシストとしての立場からしか、そういったことが見えていないと思うので。
K:でも一言で言って、納さんの答えは何なんですか? その、良いベーシストと良くないベーシストの違いというのは。
O:皆さんからいろんな意見を聞くと、例えばエリックさん(トランペットのエリック・ミヤシロ氏)なんかは、「とにかくピッチを大事にしてほしい」ということをおっしゃってましたね。
ああいった、ビッグバンドやホーンセクションといった形態での演奏活動をするホーンプレーヤーというのは、数セントという単位でピッチを合わせているんだそうです。
(セントとは、音程を表す単位で、例えば1セントは半音を100分の1に分割したその1単位。全音だと200セントに分割することが出来る)
彼曰く、「僕たちはほんとにもう、数セントという単位で音程を合わせているのに、そのボトムとなるべきベーシストが、音程や、自分の上に乗るハーモニーに無頓着だと話にならない」と言うことなんですよね。

あるいは村田さん(トロンボーンの村田陽一氏)だと、「グルーブの芯になるベースプレイが何より大事で、それが作れていないのに無駄の音が多い人は困ります。グルーブを作るという意識があれば、音数って少なくてもサウンドは定まりますよね」といったことをおしゃっていました。

K:はぁ~。
O:どうしても、みんな結構弾きたがるじゃないですか、必要以上に。
K:はいはい。

O:目立ちたいというか。でも肝心なことは、どれだけ黒子に徹することが出来るのかっていうあたりが大事なのかなって思います。基本はね。
で、ここぞというポイントではしっかり前へ出るというのかなぁ、そういったさじ加減というのが本当に大事だって思いますね。
K:はいはい。
O:で、こういうのって、教えようとしても教えられるものでもないし、まさに個々のベーシストのセンスですからねぇ。
K:そう、センスですねぇ。
O:だからといって、そういうことを語る上では、センス任せにもしていられないので。
K:確かに。
O:ですのでいろんな音源を聞き込んで、とか、こういった、他の楽器の人とのディスカッションを重ねることによって、何が重要であるを考え、どういったことをいつも意識しながら、ベーシストとしての仕事をするべきかというようなことを研究するしかないのかなと思っているんです。
そういう意味では、まさに経験ですよね。
K:なるほどねぇ~。
プロのベーシストとして弾く立場からいうと、そういうことなんでしょうね。

でも立場によっても解釈が違いますよね。僕なんかは、一緒にアンサンブルを作る者としていうと、当然やはり「ベースが迷っていてどうすんだ!」みたいなところがありますよね。
O:そうですよね。
K:だからほら、間違いまくるベーシストとかね、いるじゃないですか。特にアマチュアに近くなればなるほどね。ベースが「そこやっていてどうするんだ!」みたいなね。
そういったことはわかりますよね、一緒に演奏している立場ならね。

O:クリヤさんはいままでに、良いベーシストとたくさん演奏をされてこられたじゃないですか。
K:はい。
O:そういった経験から、何か良いお話を聞かせてもらえればと思います。例えば海外のベーシストでも、もちろん日本のベーシストでもいいんですけど。あの人はよかったな、なんて方。あるいはああいったベーシストは参考にして欲しいなっていうような方ですね。
K:う~ん、ベースねぇ。誰だろう?
O:もちろん、誰という名前を挙げなくても結構なんですけれど。
K:ああ、エシェット・エシェットっという人がいますね。
O:えっ、誰ですか? 知らないなぁ。どこの人ですか?
K:もともとはアート・ブレーキーのジャズメッセンジャーズでやっていた人ですね。
(僕の不勉強で、全く存じ上げていなかったのですが、Essiet Essietという、アメリカのベーシスト方です)
O:へぇ~。
K:今も現役でやってらっしゃいますよ。
O:そうですか。
K:多分、僕たちと同じ歳くらいじゃないかなぁ。
(1956年生まれなので、僕やクリヤさんの4歳年上です)
O:そうですか、全然知らないわ。で、その方は、どういったふうに良いんですか?
K:いや、もう、それはもう真っ黒ですよ。
O:ハッハッハッ!
K:エルビン・ジョーンズがベースを弾いてるような感じですね。
O:それねぇ! それはもう、なんていうのかなぁ、血の違いって言うんですかねぇ。
K:ですよね。
O:我々ではもう、どうしようもないところがありますよね。
K:ああなっちゃうとね。
O:そこまで行くとね。
K:そう、あそこまでいくと。
O:どう頑張ってもね。でもきっと、黒人の中でもちょっと特殊なんじゃないですか?
だってエルビンとかブレーキーなんて、黒人ならみんなああなるかっていうと、そうじゃないしねぇ。
K:そうそう、ほんと、そう!
O:血というか、魂というか。
K:ほんと、そうですよ。
O:それはそれで、また参考にならないですね。ハッハッハッ!
その辺りになると、分析不可能ですからねぇ。ある意味、アウトサイダーですよね。
K:アウトサイダー!
O:無理ですよね。
K:でしょうね。
あ、あと、1990年代に 、大坂君(ドラムスの大坂昌彦氏)と一緒に僕のX-Barトリオをやっていたジェームス・ジナスとは、実はそれ以前のアメリカ時代から、一緒にドサ回りをしてたんです。そのときは彼と一室二人部屋っていうんですか、同じ部屋に寝泊まりしてましたからね。だからずーっと一緒だったんですけれど、その頃彼はエレベしか弾いてなかったんですよ。
O:へぇ~、そうですか。彼って僕らと同じくらいの年齢ですよね?
K:いやいや、ちょっと下ですよ。
O:ちょっと下かぁ。
K:僕が20歳ちょっとの頃に、一緒にドサ回りしてました。アメリカの南部の方をね。
そう、そのころはまだエレベしか弾いてなかったなぁ。
O:そうなんですね。
K:そう。いや、面白い人ですよ、あの人は。
O:ふ~ん。
K:でも良いサンプルっていうなら、まさに納さんが、そのサンプルだから。
O:いやいや、まあそれはおいといて。
K:だから、一緒にやっているものとしての立場としては、なんでもベースを頼りにやってますよ。結局、全てベースに合わせていくといった形が、一番成立しやすいですよね。
O:そういえば、3日くらい前に、ブルーノート東京の配信番組の中で、ロン・カーターにインタビューをしたんですが、彼も、ベースが全てを決めるって言ってましたね。バンドのトーンからグルーブの位置、さらにはそのハーモニーまで、そういったもの全てを、ベースが決めているんだって言ってました。
K:でしょうねぇ。
O:だから、リズムに関しては、ベーシストならみんな意識しますけど、トーンとかハーモニーとかを、実はベースが決めているというような意識って、なかなかベーシストは持っていないかもしれませんね。
K:ベーシスト自身がね。
O:そう、ベーシスト自身が。リズムセクションなので、ドラムと一緒にリズムだけ作っていればいいというような意識。でも本当はドラムスだって、例えばどのシンバルを使うかっていうような選択一つで、バンドのカラーとかハーモニーが大きく変わるんですよね。
そういったことを意識しているドラマーと、ただただリズムだけを出しているドラマーとじゃ、アンサンブルのサウンドが大きく変わってきますよね。特に繊細な音楽だとね。
K:そうです、そうです!
O:そういうところってありますよね。
あ、でもなんか僕ばっかし喋ってますね。これじゃ、インタビューにならない!
K:ハッハッハッ!
O:僕の話はいいんですよ。クリヤさんに喋ってもらわないと。
K:ギャッハッハッハッ!
O:これ、クリヤさんのインタビューなんで。
K:そうですね。
O:じゃあ質問を変えて、「こういうベースは嫌い」ってのはありますか?
K:ま、だから、音数が多いのとかね、余計なことばっかりやってボトムがないのとかね、そういうのは嫌ですね。とにかく、音数が多くて隙間がないのは嫌ですね。
O:みんな、それ、言いますね。
やっぱり、音数が多いのと、それとボトムにいないってのが嫌だって。
K:うんうん、ボトムにいないのね。みんな言いますよ。
O:そりゃ、そうですよね。だって「ベース」なんだもん、ボトムにいないとねぇ、そりゃ仕事にはならないですよね。
K:仕事にならないですよね。
でもたまに、ほんとにボトムにいない人もいるからねぇ。ほんと、「ええ~っ?」って感じですよ。そういう人、いますよ。
あとはどうだろうなぁ。
音楽っていろんな種類があるじゃないですか。それで、我々が接する機会が多いのって、意外とグルーブものが多くて、各パートが割とフリー、すなわち自由なんですよね。ピアノがどういうボイシングをやったって怒られることはないし、どういうコンピング(伴奏)をしても怒られはないし。ドラムスにしてもベースにしてもそうだけど。
で、よく考えると、その、ロン・カーターが言っている通りなんですが、さらに解釈すると、8ビートや16ビートものって、ベースのパターンで音楽が決まるじゃないですか。
O:そうですね。
K:だからそれこそ、センスだけじゃなくて、知識というか、ねぇ。
さっきのエルビンもそうですが、ベーシストのポール・ジャクソンのように、誰も思いつきもしないようなベースパターンを思いついて、「ええっ!?」みたいなかっこいい音楽が出来るというような。それってほとんど、発明品に近いですよね。ベースラインというか、ベースパターンというか。
O:ポール・ジャクソンね。クリヤさん、よく一緒にやってましたよね。
K:もちろん、もちろん。
O:あの人もねぇ、もう、わけ、わかりませんよね。あれもある種、わからないですよね。
K;わからない! わからないなぁ。
O:壊れる寸前、ギリギリみたいなところにいますよね、あの人。
K:ギリギリのところね。肝心なときに、そこのルートを弾かない、みたいな。
O:はあはあはあ。
K:肝心なところでね。それってやっぱり、納さんがおっしゃったように、血のものですかねぇ。
O:そうですねぇ。そういえば、イタリアで最近よく一緒に演奏されていた、あの超絶の、太った …
K:おお、おお、フェデリコ・マラマンね! あの人ねぇ。
O:めっちゃくちゃうまいでしょ?
K:死ぬほど上手い!
O:死ぬほど上手いよね!
K:びっくりした!
O:その辺のギタリストより、指、動きますからねぇ。
K:でもボトムもありましたよ。
O:ああ、やっぱしね。しっかりボトムがあるんですね。
K:実に音楽的なんですよね。
O:ふ~ん。
K:ほんと、音楽的。ただの「指が動く超絶」じゃないんですよね。凄く詩的で歌心があるって感じです。
O:なにかそういったバックグラウンドがあるんですかねぇ? クラシックを勉強してきたとか。
K:そうかもしれないんですけど、普段はポップスの歌バン(いわゆるサポート仕事)、やってますよ。日本ではいまいち、無名ですけどね。
O:でもYouTubeには、ほんと、たくさんの動画がアップされてますよ。
K:ほお、出てる?
O:ただ確かに、日本の来日するような活動じゃないですよね。日本に呼ぶにしても、そういったバンドでもやってくれてないとねぇ。彼一人呼んでも、みたいな。
K:そうそう。でもフェデリコは、最近海外で一緒に演奏したベーシストの中では一番かな。
O:でしょうね。
K:ジャコ・パストリアスがどんな演奏をしていたのかというのは、僕も大体は聞いていますが、ジャコを実際、目の前で聞いたことがないので比較はできないんだけれど、多分ジャコはあんな感じだったのかなぁと思います。あるいはジャコより上手いのか?
O:それはもう、単純に技術でいうと、フェデリコはジャコを超えていると思います。
K:あ、ほんとに?
O:うん、完全に。
K;そうなんだ。
O:ええ。ただその、ジャコのような、あの圧倒的なインパクトがあるかという点ではね。
まあ、最近の超絶なベーシストはみんなそうなんですが、技術的にはみんな、本当に凄いんですけれど、ジャコのその、パイオニアとしてのインパクトという点に関していえば。
K:そう、そうですね。ジャコの前には誰もいなかった訳ですからね。
O:そうそう。
K:無から有を作ったってことですよね。
O:ポール・ジャクソンもそうですよね。あのインパクトは、どんなに上手なベーシストが、どんなしっかりしたベーシストが出てきたとしても、あの破壊力は出せないですよね。
もうほとんど、破壊してますからね、あの人のベースは。
K:ハッハッハッ。
でもパーソナリティの問題もあるかも。フェデリコはもう、めちゃくちゃ良い人なんですよ。
O:動画で見る限りでも、優しそうな人ですよね。いつもニコニコした、良い感じの人ですよね。
K:あとね、フェデリコはね、なんか美しいですよ、全体が。だから曲調が、バラードであろうが、逆に、ややこしいぐちゃぐちゃした曲であろうが、どんな曲をやろうが、美しさが彼にはありますね。
O:ふ~ん。
K:それくらい、美的感覚が優れているというか。でも一緒にやると、それはまた話が違うわけで、一緒にやるときはかなり緻密なことを言ってきますね。
O:へぇ。例えば?
K:なんかちょっとずれたりしたときに、「まあ、ええやんか」というようなことは許されない。
O:ほお。
K:で、僕がヨーロッパに行ったときにいつも一緒にやっているイタリア人のドラマーが、ちょっといろいろ弱いところがあるんですよ。で、ぼくとしては、「まあ、ええやんか」ってところがあるんですけれど、彼はそれが許せない。それで、しごきにはいるんですね。
O:へぇ~!
K:しごき。「はい、もう一回! はい、もう一回!」って感じで。
簡単にビデオクリップを撮るというようなとき、適当に2,3テイク演奏して、それで「終わりにすれば良いじゃん」っていうのが、簡単に終わらない。「はい、もう一回! はい、もう一回!」って。
で、「なんでお前は出来ないんだ?」みたいな感じで、そのドラマーがつるし上げられるんですよ。
O:へぇ~!
K:僕のミラノのトリオでね。僕はそのドラマーとずっと一緒にやっているんだけれど、もう、ベーシストばっかり変わるんですよ。ベーシストばっかりあの人この人ってことになって、大体いつも物足りない人ばっかりだったんだけれど、あるときフェデリコが来て、物足りないどころか、物足りるどころでもないみたいな。もう、物足りすぎるくらいな感じでね。そりゃ大変だったですね。
でも演奏は終わると、ドラムセットの片付けとか全部手伝ってあげてたりして、凄く良い人なんですよ。愛の塊みたいな人なんですよ。
O:それは素晴らしいですね。
K:ボトムもあるし、とても美しさもあるし、やっぱりフェデリコはいいと思いましたね。

でもまあ、納さんもよく判ると思うんですけど、僕が思うのは、楽器に関係なく、一緒にやっていいと思うのは、音の太さじゃなくて、音の幅みたいなね。
O:音の幅?
K:うん。音の幅が一番大事だなと思うんです。
上手い人はみんな持っていると思うんですよ。なんかほら、例えばギターでも、手数ばっかり多くて全然感動しない人っていうのは、ただパキパキパキパキやってるだけ。でもそうじゃなくて、音が多くても少なくても、音がグサグサくる感じっていうのかな。
O:ふ~ん。
K:そういうのって楽器は関係ないんですよ。たとえばポール・ジャクソンはきますよね。破壊してるけれど、くるんですよね。
O:うんうん。
K:リズムって言えばリズムなんだけど、リズムでもあるし、音色の太さでもあるみたいな。
それってなんて表現いたら良いのかなぁ、よく判らないんだけれども。
O:そうですね。まあ、説得力というか、強さというか。
K:強さかなぁ。ストロングなものが、もちろんベースにもあって欲しいし。でもそれってどの楽器にも言えることですよね。
O:そうですね。
K:それが一番大事で、それがミュージシャンのレベルを決めるものだと、僕は思っているんですよね。
O:そうですね。
K:なんか、凄くそう思うんですよね。ドラマーだって、そういう人はたくさんいますよね。一音一音が「グサッ、ドスッ」って来るような人、いるじゃないですか。
そうじゃなくて、手数だけ多くて、一音一音が全然来ないと、もう、嫌になっちゃいますよね。
O:そうですね。
K:それが一番大事だから、ボトムがないベーシストなんて、もう問題外ですよね。
O:でも、どうすればそういう「ストロングさ」みたいな物が体得出来るんですかね?
それって一体なんでしょうね?
K:納さんにしてもフェデリコにしても、そういうなんか、言い方を変えれば、揺るぎない物、揺るぎない説得力というのかな、一音一音が揺るぎない説得力を持っているんですよね。一音一音。それが動いているみたいな。
O:うんうん。
K:だから、その一音だけでもありがたいから、そんなにたくさんな音数がなくても、十二分なボトムが出てくるってことですよね。
O:確かにね。
K:ギターでもピアノでも、全部そうですよ。
O:ですね。説得力なり強さなり、良いプレーヤーにはみんな、そういったものがありますね。
K:それはフロント楽器の人でもそうですよね。
もう20年くらい前に、東京でソニー・ロリンズのバンドを見たときに、なにか経費面での問題でもあったのか、それはわからないけれども、とにかくロリンズ以外はメンバー全員フニャフニャだったんですよ。
O:アッハッハッハッ。
K:なんか、彼の親戚が二人くらい入っていたんだけれど、もうヘロヘロなんですよ。
で、ロリンズのラインだけが聞こえてきたんですが、サックスって単音楽器じゃないですか、でもその単音のラインを聞いているだけで何もかもが聞こえてきたんですよね。
もう全てのリズムがそこにあってね。ドラムスのパターンも聞こえてくるし、ハーモニーも聞こえてくるしね。
O:あります、あります。
K:もうそれだけで十分って感じなんですよね。
O:あのクラスになると、もう一人一人で成立してるんですよね、完全に。それが4人なり5人なり集まったり、ビッグバンドなら10数人集まったりしてね。だから、誰かが誰かに頼っているっていうようなもんじゃないんですよね、海外の強力な連中は。
K:そう、強力な連中はね。そうそう。そういえば、あのフォー・プレイのギタリストの、誰だったっけな。「一緒にやろうぜ」って言った矢先に亡くなっちゃった。
O:チャック・ローブですね。
K:そうそう! 彼のギターは良かったなぁ。あの人も一音一音がめちゃくちゃ説得力があってね。「これは久々に良いギターを聞いたわ!」って感じでしたね。意外と若かったですよね。
O:そうでしたね。僕らとそんなに変わらなかったんじゃないかなぁ。ちょっと上くらいじゃなかったっけ?(1955年生まれでした)
K:ですね。チャック・ローブのギターにもそれがあるし、ハービー・メイスンのドラムにもそれがあるし。一人一人があんなんで、そういったプレーヤーが4人集まってですから、それは凄いですよね。
O:そうですね。

K:フォー・プレイなんて、たいして難しいこと、やってないのにね。
O:ハッハッハッ、たいしたことやってない、確かに。ちんたらしたフュージョンなのにね。
K:そう、ちんたらしてんのにね。
O:そりゃあの実力者たちがあんな楽勝な楽曲をやったら、そりゃええサウンド、できますわな。
K:ねえ。でもあのギターは見事でしたよ、ほんとに。ボキボキでしたよ、ボキボキ!
あのギターを聞いているだけで、その、例の、さっき僕が言ったロリンズみたいなもので、ドラムスがフニャフニャで、ベースがヘトヘトでも、全然大丈夫って感じ。
やっぱり、そういう物を求めるんですかね。
O:いや~、面白い話でしたね。話は全然つきないですが、もう20分も経って、相当長くなったのでそろそろ終わります。本当にありがとございました!
K:いえいえ。

CODA /納浩一 - NEW ALBUM -
納浩一 CODA コーダ

オサム・ワールド、ここに完結!
日本のトップミュージシャンたちが一同に集結した珠玉のアルバム CODA、完成しました。
今回プロデュース及び全曲の作曲・編曲・作詞を納浩一が担当
1998年のソロ作品「三色の虹」を更に純化、進化させた、オサム・ワールドを是非堪能ください!