
サロンにご参加の方から以下のようなご質問をいただきました。
問:スタンダード、コンテンポラリーな曲を問わず、コード譜と照らし合わせてベースラインを聴いていると、律義にコードに合わせていないように感じる演奏が結構あるように感じます。ベーシストが独自にコードをシンプルに省略して解釈し直しているのか、バンドとしてアレンジ自体をシンプルなコード進行にしているのか…どちらのパターンもあるとは思いますが、納さんはコードをシンプルに省略して演奏することはありますか?
もしありましたら、その法則を伝授頂きたいです。
ということで、お答えします。
答:はい、本来のコード進行に手を加え、変化させて演奏する場合、「ベーシストが独自にコードをシンプルに省略して解釈し直している」場合と、「バンドとしてアレンジ自体をシンプルなコード進行にしている」場合のどちらもあります。
後者の場合は、事前にバンド内での合意が出来ているわけですから、特に問題はないと思います。
いろいろな疑問や問題が生じる場合は、もっぱら前者の場合でしょう。
もちろんおっしゃるとおり、譜面に書かれてあるコード進行や、スタンダード曲でのオリジナルなコード進行を律儀に追わず、それを無視して演奏することはよくあります。
その場合、シンプルにする場合もありますし、複雑にする場合もあります。
また全く違うコード進行に変化させる場合もありますが、そのどの場合も、一応理論的な裏付けを素にやっているというのが基本です。
まれではありますが、場合によっては、でたらめやめちゃくちゃもあります。
その場合は、言葉や理論では全く説明がつかないのですが、それこそジャズの醍醐味でもあり、面白さでもありますね。
さてではシンプルにする場合について解説します。
一番よくある場合は、ツーファイブのどちらかを省略する場合です。
例えばDm7-G7-Cというコード進行があれば、まずはG7-Cにするというものです。
コード進行をシンプルにする場合、この方法が一番多いでしょうね。
もちろんDm7-Cとする可能性も有りですが、この場合はドミナントモーションがなくなり、ポップスのようなサウンドになる可能性が多いので、ジャズの場合なら、前者の方が一般的かと思います。
次のアイデアとしては、そのDm7-G7-Cの場合に、その全てのコードをGペダルにして、
Dm7/G (G7sus4)-G7-C/G
というような、ドミナントペダルにすることによって、シンプルな流れにすることも多いです。
このように、ある一つの音を持続させるペダルポイントというのはツーファイブだけに当てはまらず、多くの場合に適応させることが可能です。
それによって、ハーモニーの流れを大きく変えることが出来ますし、また同じ音を連続させているので、逆にリズミックな変化を付けることが出来ます。
良い例が、「On Green Dolphin Street」の最初の8小節でしょうか。
コード進行は
E♭-G♭(E♭m7)-F7-E△7
ですが、この進行に対して全てベースノートをE♭(あるいはB♭)にするというものですね。
その場合に、ウォーキングラインにしてしまっては、ペダルポイントのサウンドが出ませんから、たいていの場合、ラテンのリズムなどで演奏しますね。
枯葉のさびの部分でも、Cm7-F7-B♭の4小節をFペダルで、続くAm7(♭5)-D7-GmをDペダルで、といようなこともよくやりますね。
あとは、コード進行に対して、それぞれのコードのアベイラブルスケールを考えたとき、一つのモードで対応出来るようなときは、その部分を大きくワンモードにしてしまうという方法もあります。
例えば、「My Funny Valentine」のさびや「Moment’s Notice」に現れる、
E♭△7-Fm7-Gm7-Fm7
は、結局どのコードもその構成音は全てE♭のアイオニアンと同じですから、細かいコードの動きを無視して、E♭アイオニアン、あるいはB♭ミクソリディアンだけと考えて、シンプルにする方法もあります。
あと、循環(リズムチェンジ)の前半4小節は、全てB♭一発と考えてラインを作ることもよくやります。
これらのアイデアはもちろん、ソロにも使えますから、こうやってシンプルにしてソロを取りやすくするものいいでしょう。
シンプルにする場合というのは、大体このようなアイデアによるものでしょうか。
いかがでしょうか?