No Zone by John Patitucci ベース譜

DL23062322

No Zone by John Patitucci ベース譜

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この曲は、この音源の最初にもチックがMCで喋っているように、パティトゥイッチのアコースティックベースをフューチャーした内容となっています。
ライブでの演奏ということもあり、彼のソロだけで4分近い長さとなっています。

録音は1987年で、東京でのコンサートの模様だそうです。
ちょうど僕がバークリーにいた頃にリリースされたものですが、いま聞き返すと、よくもまあこんな長いソロを、しかもそのすべて採譜しようと思ったものだと、当時の自分自身のその情熱に敬意を表したくもなりました。

なぜこのソロを採譜したくなったかというと、まず言えることが、この曲のリズムがいわゆる4ビートではなく、イーブンな8ビートだったからです。
当時、アコースティックベースのソロで、コード進行の多いジャズの曲でのそれは、良いお手本が本当にたくさんあったのですが、この曲のようにイーブンなノリでのものはほとんどありませんでした(少なくとも、ぼくは知りませんでした)。
しかも、コード進行もほとんどなく、BmのエオリアンとEmのドリアンのみ。まあ、言ってしまえば、いわゆる一発ものですね。
こういったコードでのソロも、ほとんどありませんでした。

もちろん、エレクトリックベースでのそういったソロはたくさんありましたが、それも、このパティトゥイッチのように、かなりアドバンストなソロのアイデアを駆使してのものというと、ほとんどなかったように思います。
そんなこんなで、まさにそのときの僕にとっては「おお、これは絶対、すべてを採譜するしかない!」という気持ちになったのだと思います。
そういった一発もののソロで何よりも大事になってくるのは、細かい個々のフレーズもそうですが、それと同じくらい、いやそれ以上に、ソロ全体の構成、言い換えれば、ソロのストーリー展開です。

一発もののソロを取ったことのあるベーシストの方ならよくわかると思います。
最初は勢いよく出るのですが、そのうちネタ切れになって失速していくという、あの感じ。
あるいは、長くソロを取っている割には、一向に盛り上がらず、終止、同じようなテンションの、同じようなフレーズやソロの展開が、ただただダラダラと続いていると言ったあの感じ。
判りますよね?

僕自身、当時そんなことでずっと悩んでいたわけです。
「どうすれば、一発もので、ストーリーのある、後半にぐっと盛り上がっていくソロが取れるんだろう? そのためにはどんな事を考えながら、ソロ取れば良いんだろう?」といったことです。
そして至った結論が、細部の細かなフレーズだけではなく、ソロ全体でどのような起承転結を想定し、そのために、どのような起伏をつけながらソロを盛り上げていくべきなのかといったことを意識しながらソロを取る必要があるということでした。

そのためには、こんな長いソロですが、その全体を採譜して、ストーリーのシェープを捉えなければならないと考えたわけです。
逆に言うと、パティトゥイッチが弾いているような個々の強力なフレーズ、そう、僕には到底再現不可能なフレーズはさておき、ソロのストーリー展開が判れば、パティトゥイッチとまでは行かないまでも、それに近いレベルで、オーディエンスにインパクトを与えるソロが取れるのではないかと言うことですね。
確かに今回、改めて採譜してみて、絶対弾けないようなフレーズのオンパレードです!

例えばハイポジションでいうと、上のAの音まで使っています。こんな音、僕はアコースティックベースでは到底使えません。
これは6弦ベースでの、Hi-C弦の21フレットに当たりますから、4弦ベースで言うと、G弦の26フレットですか? 普通の4弦ベースにそんなフレット、ありませんよね!

しかもその音だけを「ポン!」と弾くのではなく、超絶なパッセージの最高音でそこまで上がり、さらそこからまた一気に駆け下りるのですから、開いた口が塞がらない。(例えば46小節目)
そんな超絶なフレーズはさておき、これなら使えるというようなソロのアイデアを、いくつかポイントを挙げて解説しておきましょう。

ポイントと解説
1)アルペジオの分散フレーズ
その46小節目からのフレーズですが、これは彼が得意とする、彼のソロではよく聞かれるフレーズです。
基本は、Em7に対して、GMaj7のアルペジオの分散を使います。最初はF#の音から入り、続いてG→B→D→F#→A→Ab→Gとなります。
これによって、ルートのEに対して、9thや11thといったテンションノートの入るフレーズとなります。
このようなフレーズが、このソロの随所に出てきますので、探してみてください。

2)複雑なリズミック・モチーフの展開
これも彼がお得意とするアイデアです。
たとえば79小節目辺りかのフレーズでは、3連の4つ取りのフレーズを数小節にわたって続けていますね。

3)4thのフレーズ
4thのフレーズというのは、すなわち完全4度のインターバルでのフレーズということです。
その79小節目からの複雑なリズミック・モチーフを作るときに、その基本アイデアは4thのインターバルとなっています。例えば81小節目では、その中にG→C→A→Dという動きがありますのね。こういったインターバルを連続させています。
4thというのは、そのインターバルがとても無機質な響きを持っているので、こういったコンテンポラリーなソロの時に多用するのはとても有効なアイデアと言えます。

4)同じようなモチーフを、様々な音域で連続させる。
36小節辺りからのフレーズでは、同じような形のフレーズですが、それを、高域、中域、低域でそれぞれの音域で弾くというだけで、とてもカラフルなフレーズになっています。
同じようなアイデアは、89小節目辺りにもあります。
シンプルなアイデアですが、とても有効です。

5)ブルーノート
やはりマイナーの一発ですから、ブルーノートペンタトニックの使用も有効です。52小節目辺りにありますね。

6)絶妙なニュアンス付け
僕がこのソロの中でとても気に入っているのが、62小節目にある、6連をスライドで弾いているところです。なんとも、ゾクッとしませんか?
と、ざっと挙げるとこんなところでしょうか?
でもそれ以外にも、クロマティックな動きのアウトフレーズや、同じ音だけを、リズミックなモチーフで発展させる方法など、このソロの中にはもう、使えるアイデアが満載です。

先ほども言いましたが、このパティトゥイッチと同じフレーズを弾くことは至難であっても、アイデアとして使えものは本当にたくさんありますから、是非そういったものをピックアップして、皆さん自身のソロのアイデアとして取り入れてみてください。
そして、これも先に言いましたが、こういった一発のコード進行でのソロで何よりも大事なことは、そのストーリー展開です。そのことも、このパティトゥイッチのソロ参考にして、いろいろ研究してもらえるといいと思います。