Unicorn by Marcus Miller ベース譜

DL23081602

Unicorn by Marcus Miller ベース譜

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Unicorn(Album ‘TOCHIKA’ Watanabe Katsumi / Played by Marcus Miller)

ではここからは、実際のベーシストの演奏をいくつかピックアップして、ここまでに考察してきた伴奏やソロに対するアプローチを、彼らの実際の演奏の中でみてみることにしましょう。

まずはマーカス・ミラーの伴奏における、2フィンガーとスラップの16分音符の切れが素晴らしい演奏を取り上げます。この曲は、日本を代表するギタリスト、渡辺香津美さんが1980年に発表されたアルバムに収録されている曲です。マーカス・ミラーは、この録音の時は若干20歳。参りますね。そういえばこのアルバムのタイトル曲「TOCHIKA」は当時、日立マクセルのカセットテープの宣伝に使われていたと記憶しますので、お茶の間でもよく流れていたような、そんなアルバムです。マーカス・ミラーに関していえば、もう敢えて何かを説明する必要も無いほど、いまやエレクトリックベースの世界では、最も有名なベーシストです。僕は2度ほど、彼と共演したことがあるのですが、やはりその音の説得力は特筆すべきものがありますし、ソロはもちろんのこと、その伴奏においても、伴奏におけるストーリーの作り方やアイデアはさすがの一言でした。この、「伴奏でのストーリーの作り方」というのは、ベーシストには本当に重要なポイントなのですが、実はここまでにずっと解説してきたような、「どんなスケールを使うか」や「どんなアイデアでフレーズを作るか」ということ以上に、ベーシストに取って、アンサンブルの中で最も重要なことといえます。しかしながらこればかりは、ソリストや周りのプレーヤーとの関係性で成り立つものなので、なかなか文章で解説したり、「こうあるべき」と決めてお話しできないものともいえます。さて、それはさておき、ではこの演奏にけるポイントを解説します。

まずAセクションを見てください。初っ端から16分音符の裏で曲が始まりますね。それに続いて、16分音符1個分を抜いたベースパターンが連続します。もうこの数拍だけで、16ビートにそこそこ自身がある人でも、面食らってしまうかもしれませんね。さらには2小節目の4拍目に、3連のフレーズが出てきます。ここで少しブレーキをかけたようなリズムになっています。この、16分音符と3連の8分音符の違いをしっかり出すような練習も、いいリズムトレーニングになります。例えば16分音符4つの連打と3連の8分音符の連打を1拍ずつ交互に弾くというような練習をしてみてください。「タタタタ・タータータ・タータータ・タタタタ」というような感じですね。
さて曲に戻りましょう。Aセクションの4小節目の3、4拍目にある、16分音符の裏裏のフレーズもやっかいです。特にその前の1,2拍目に、B♭から大きく下がってくるフレーズがあるので、それに続く裏裏のフレーズだけに、しっかり切れのある16分音符を弾くのは、かなりトレーニングされたテクニックとリズム感が必要です。この複雑なフレージングによるパターンが繰り返されるこのAセクションは、これだけで本当に良い16ビートの練習フレーズになると思います。

さてその先には、なかなか面白いアイデアのアプローチがあります。それはAセクションの後半にある、ダブルストップ(重音)のアプローチです。9小節目では、C/Dというコードの対して、DとAによるダブルストップを当てています。こちらは特にどうというほどのアプローチではないのですが、その先にある、D/Eのコードの部分でのアプローチはなかなかユニークです。D/Eというのは、構成音でいえば、Dのトライアード(D、F#、A)と、ベースノートのEから出来たコードです。これはコンテンポラリーな曲で頻繁に現れる、サスフォーのサウンドを持ったコードです。言い換えれば、コードのカラーを表す3度の音が入っていないので、メジャーでもマイナーでもない、中間的なカラーを持つコードなので、昨今のコンテンポラリーな音楽では頻繁に使われるています。D/Eは、基本はE7sus4と考えてもいいと思います。マーカスはそれに対して、E、A、Dという3つの音を、それぞれA弦、D弦、G弦の各7フレットで弾くことによって、3音から成る重音を出しています。濁るか濁らないかのギリギリの和音ですが、これがなんとも分厚いサウンドを出していることが聴き取れます。いやいや、なかなか出来そうで出来ないアプローチですね。

ではBセクションに進みましょう。ここからはマーカスの、これはもう彼の特許といっても良いでしょう、スラップによる演奏です。4小節目に入るフィルインは、毎回違うパターンを弾いていて、そのそれぞれがかっこいい。まさにマーカスの真骨頂と言えます。この演奏のドラマーはステーィブ・ジョーダンですが、このBセクションでは、その最初の1〜8小節目では、マーカスのスラップのパターンでの1拍目の16分裏のプルが、スティーブのスネアと同じ位置に来ます。ところが9小節目からはそれが1拍目の最後の16分音符の変わります。ここら当たりの彼らのリズムアレンジも心憎いですね。Bセクションを通じて、2拍目の最後の16分音符及び小節最後の16分音符での、ベースとベースドラムも、見事なまでにぴったりと合っています。いやいや、こんなリズムセクションと一緒の演奏した香津美さん、さぞかし気持ちよかったことでしょう。皆さんも、16ビートにおけるドラムスとのコンビーネーションというような視点からも、是非この曲を聴いてみてください。そして可能であれば、このA・Bセクションを、仲間のドラマーと練習がてら、セッションしてみるのもいいと思いますよ。