とにかくウッドベースの表現力にこだわったアルバムを

2006年1月に発表したこのアルバムですが、それから10年も経ち、もう手元にも在庫がなく、発売元のキングレコードに注文するにもまとまった枚数でないと無理そうだったので、それも諦めていました。

全然知らなかったのですが、昨年の12月から、低価格で再販されているということです。
いや~、ビックリするやらうれしいやら。

僕のリーダーアルバム「琴線/ The Chord 」に関しての、自分なりのコメントを書いてみたいと思います。

この話をキングレコードの名物プロデューサー・森川さん(例のベースを大フューチャーしたシリーズ、「低音」シリーズの仕掛け人。本人もベーシストなんですね、これが)

からいただいたときは、はっきりいって「やばいなぁ」って思いました。
だってそこまでにこのシリーズでリーダー作を出している人たちを挙げると、ブライアン・ブロンバーグ、ビクター・ウッテン、アビシャイ・コーエンなどなどですよ!

そんな凄腕ベーシストたちのあとに僕が何をできるんだろうかってね、深く考え込んでしまいました。

でも森川さんの、
「納さんのファンや日本のアマチュアベーシストたちは、日本人である納浩一が、そういう人たちとはまた違って、どんな味を出すだろうって、きっと凄く期待してると思うんですよね」

という言葉にのせられて、
「ほな、だめもとでいっちょ、やりましょう!」ってなことになったわけです。

結果として、やってみて良かったなぁと思っています。

きっと自分からは、進んでこういった企画のアルバムを作ることはなかったと思います。

どういう意味かというと、ベースを、しかもコントラバスのみをフューチャーし、編成も限られ、選曲も基本的には有りもの、それも多くのジャズファンが知っているような有名曲を選んで作品にするというようなことは、かつて全く考えたこともなかったからです。

でももちろん普段はこういった曲を、ライブの度に演奏していたわけですから、決して嫌いではなかったのですが、敢えて作品として世に出すという気持ちは全くなかったわけです。

でも森川さんからこの企画を頂いて、選曲に入ったときに、
「とにかくウッドベースの表現力ということにこだわろう。それにしっかり合致するような人選・選曲・演奏にしよう!」と思ったわけです。

ということでそんなところがこの CD を聞いてくれた方に伝われば嬉しいなと思います。

「琴線」というタイトルも、そんな気持ちでつけました。

もちろん先ほど挙げたベーシストたちは、彼らのリーダー作のなかでは、驚くような技術を駆使し、圧倒的な演奏を繰り広げています。
僕には到底できません。

でも多くの人が聞きたいと感じているのは、そういったベースの技術ではなくて、
「心の奥の琴線に触れる、優しさや暖かさや強さに包まれた音楽」
じゃないのかな、そんな気が最近しています。

もちろん先ほどの人たちがそんなことをおろそかにしているとは思えません。
ただ僕がそういう人たち肩を並べる場所があるとするならば、とにかくそういうことを大事にするしかないのかなと思うわけです。

まあとにかく、僕のベースプレイが皆さんの心の琴線に触れることができたなら、本当にこの作品を出して良かったなぁと思います。

では1曲ずつ、その聞き所や選曲理由なんかを挙げながら紹介したいと思います。
このコメントを読みながらCDを聞いてもらえると、味わいもひとしおかもしれませんね。
よろしくお願いします。

ダイジェスト版はここから聞けます!

楽曲解説

01.Actual Proof

このアルバムで唯一、全員で演奏している曲です。
一発目の小沼君の「パィィィィ?ン!」っていう、フィルターのかかったギターの音、「やっぱ僕のアルバムの1曲目には、この音しかない!」ってことで、アルバムの幕開けの曲にしました。
ハンコックのライブアルバム「洪水」での、彼らの演奏はまさに洪水ですが、こちらはもう少しクールに演奏できたかなと思います。
とにかくこういった70年代のファンクチューンは、本当に好きです。

02.Bud Powell

この曲は、本当に良くできた曲だと思います。
メロディがとてもキュートで覚えやすいのにもかかわらず、ソロをとるのがなかなか難しい。
そういった意味では、ミュージシャン泣かせの曲なんです。
僕もずっとこんな曲を書きたいなぁと思っていました。でもなかなかいい曲ってかけないんですよね。
そういえば、今構想を練っている次作は、オリジナル満載にしようって思っています。
えっ、いつでるかって? 50歳までには、と思っているんです。

そのためにもどんどん曲を書いて… 。
あっ、その前にお金を貯めないとね。
前回の「三色の虹」も、実は自力で作ったんですよ。
おかげで一気に貯金が無くなりました。
まあ、そんなことはさておき、この Bud Powell でのソロ、若い頃は全く手も足も出なかったんですが、僕もこの20年でかなり上達したようですね。

03.Three Views Of A Secret

ほんま、ええ曲ですね。
この曲も、こんな曲を書きたいと想像力をかき立てられる曲なんですが、まだそれには至っていません。
あまりにこの曲は素敵すぎる!
実際はベースで、特にウッドベースでメロディを取るには、ちょっとキーがやっかいなんで、会えてオリジナルとは違うキーにしています。
でもその甲斐あってか、ウッドベースでのメロディ、なかなかいい雰囲気がでていますよね。
多くの人にとってそうでしょうが、とにかくジャコは僕にとっても、最大の影響を与えてくれた人です。
感謝の気持ちを込めて演奏しました。
これからもこの曲を演奏するたびにそうしたいと思います。ジャコ、ほんま、ありがとう!

04.I Wish I Knew

このレコーディングの直前のとあるツアーで、初めて演奏した曲です。
もちろん僕の大好きなコトレーンの「Ballad」での演奏は良く聴いていましたが、自分で演奏したことはなかった曲でした。
でもそのツアーで、ベースでテーマをとったときに、「あっ! これは使える!この曲をやろう!」って瞬間に思いました。

このアルバムの中でも、特に自分の演奏が気に入っているテイクです。
こんなふうにベースを奏でることができればなぁ、ってずっと思っていた、そんなふうに演奏ができたと思っています。

05.Donna Lee

この曲をこんなふうに作品に入れて良かったのかどうか、未だに悩んでいるテイクです。
そりゃ分かってもらえますよね?
だってあのジャコのテイクがありますからね。
あれに真っ向から、しかもウッドベースで挑戦したわけです。
「よくもまあ…」て、自分でも思います。

でも自分でひとつの区切りをつけたいという気もしたんです。
初めてあのジャコの「Donna Lee」を聞いたときに受けたショック。
それから何度もこの曲を演奏し、その度にその挑戦は完膚無きまでに打ち砕かれてきました。
今回もまたジャコに、「まだまだ」ってはじき返された気がしますが、ひょっとしたら草場の陰から「おまえ、なかなかええとこまできたな」っていってくれてるかも。

自分としては一応の卒業証をあげようかなって気がしています。
次はまた20年後に挑戦だ!
そのときはもう体がついてこないかなぁ。

06.Some Skunk Funk

この曲は、小沼君が持ってきてくれた曲です。
実は小沼君と則竹君は、僕が僕のセッションで初めて引き合わせたんです。
いろんなお店から、「納さん、是非なんかおもしろいセッション、企画してくださいよ」っていうオファーを頂き、そのときに思いついた組み合わせがこのメンバーでした。

だって二人ともかなりにイケメンですからね。
そういうミュージシャンと一緒にやれば、僕もイケメンに見れるかなぁ、なんて思って。うそうそ、そんなバカなことは思っていませんが、プレイもご機嫌で、ルックスもいいこのメンバーなら、集客もあって、お店も喜んでくれるかな、っていう算段は、やはり企画する側としては重要ですよね。
で、そのときに持ってきてくれた曲がこの曲です。

まさかギタートリオでできるとは思っていませんでしたが、小沼君がテーマを見事にギターで弾ききってくれているので、「あっ、この曲をこの編成でやるのって、かなりおもろい!」と思った次第です。
そのときにはまだこのアルバムの企画がなかったのですが、そのときから「是非この3人でこの曲を録ろうね」って、かれらと語り合っていた、そんな曲です。

07.Mood Indigo

数年前、ウイントン・マルサリスとヨーヨーマと小澤征爾が、子供たちにジャズやクラシックを通じて音楽を教えるという番組をNHKでみて、そのときウイントンのバンドにヨーヨーマが参加して演奏していた曲がこれです。
そのときにヨーヨーマが弾いたメロディの美しさには、本当に感動しました。
いつかアルコであんなふうに弾けたらなぁ、ってずっと思っていました。
今回それにトライしたんですが、どうだったんでしょうか?
もちろんヨーヨーマのように弾けているとは、死んでも思いませんが、まあ、アルコでもそこそこいい雰囲気でメロディが弾けたかなって思います。

でもそれよりソロがうまくいったかなっておもいます。
そしてそれに続くクリヤさんのソロは、本当にビッグバンドのような迫力ですね。すばらしいです。
いや、クリヤさんっていうのは本当に凄い人です。僕は彼を宇宙人と呼んでいます。
僕以外にも彼をそう呼ぶ人はミュージシャン仲間には多いようです。
なぜかって? 同じ惑星に住む生命体とは思えないような発想をするからです。
まだ彼をよく知らない人は、是非聞いてみてください!

08.Ladies In Mercedez

僕の大好きなベーシストの一人がこのスティーブ・スワローです。本当にユニークですよね。
で、ベーシストとしての才能もすばらしいんですが、作曲家としての才能がもっとすばらしいような気がします。
この曲も本当にユニークですし、彼の代表作の、「Fallin’ Grace」という曲も、本当に多くの人が取り上げていますよね。
このテイクも、僕とクリヤさんの絡みがとってもうまくいった気がして好きなんですが、ただちょっと心残りなのは、タイトルの「ベンツに乗った淑女」にしては、演奏に気合いが入りすぎたかな、と。
もう少しクールだった方が良かったのかな。ま、いいか。

09.I Wish

僕の尊敬するミュージシャンを挙げろといわれたら迷わず、マイルス・デイビスと、このスティービー・ワンダーを挙げます。
どんな逆境にあろうが、まわりを気にすることなく創造性を追い求めたマイルス。
そしてポップスという、かなり自由度の制約された枠組みの中で創造性を追い続け、そんななかで深い愛を込めた作品を出し続けているスティービー。
本当にすばらしいと思うし、影響も山程受けました。
そんなスティービーの曲の中でも、特に好きなのがこの曲です。
めっちゃかっこいいですよね、このベースのパターン!
もうこれを弾いただけでノってきちゃうって感じです。
どうにかこれをベース一本でできないかなってことでアレンジをはじめました。
ライブでもこの曲でどんどんグルーブしたいと思います。
でもマイルスの曲もやりたかったな。それは次回ということで。

10.Everything Happens To Me

この曲はスタンダード中のスタンダードで、多くの人が取り上げていますが、僕が一番好きなのは渡辺貞夫さんの演奏です。
もう10年近く、一緒に演奏させてもらってますが、幾度と無くこの曲も演奏しました。
貞夫さんはいろんな意味で本当にすばらしいミュージシャンですが、貞夫さんの演奏の中でも特に好きなのが、バラードでの演奏です。
どうしてあんなふうに優しくなれるのかな、って、貞夫さんのバラードを聴く度に思います。
この曲も、貞夫さんがメロディを吹く度に、「ああ、僕もあんなふうにメロディが奏でられたらなぁ」って思っていました。
そんなふうにできたかな?
いや、まだ貞夫さんの域には到底達していないですね。
まだまだ人生経験が足らないんだろうな。がんばろ!

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