佐久間正英さんの「音楽家が音楽を諦める時」というブログ、僕もリツイートさせてもらいましたが、かなり話題になっているようですね。
僕自身、職業音楽家を取り巻く状況に関して同じようなことを感じていたので、自分のブログでも似たようなことを書いてきました。
僕的に言わせてもらえば「勇気ある撤退」ということかと思います。
でもそれはもちろん、佐久間さんもおっしゃっているとおり、音楽を自分の人生から取り除くという意味ではなく、職業音楽家として、今の状況に立ち向かって事態打開を図るために頑張っていくことにもう限界を感じているということなんでしょう。それも良く分かります。

僕自身、職業音楽家として10年後にはたしてこれを生業に出来ているかどうかという点に関しては、大きな不安を感じていると言わざるを得ません。
後進を指導するときによく、「せめて5年後の自分のあるべき姿や、そうなっていたいと思う状況をイメージできていないとダメだよ。」といっていたのに、です。

そういえば10年ほど前、大先輩のピアニストの方から「ミュージシャンも50歳を過ぎると、なかなか人からお声がかからなくなるから、その時の対策、考えておいたほうがいいぞ!」と言われました。
その言葉が妙に引っ掛かったので、それ以降(もちろんそれ以前も何となくはそうやっていたつもりですが)、声をかけてもらえるというのはどういうことだろう、50を過ぎても人から呼ばれるためにはどういうプレイをすべきだろうか、という命題に対して真剣に取り組むようになりました。
そのおかげか、幸い、まだお声をかけてもらえる状況は続いていますが、これとて5年後はどうなっているか分かりません。「声をかけてもらう」という意味においては、あくまで他力本願ですからね。

そんなことで、60歳を過ぎたとき、自分はミュージシャンとして何とかやっていけているのかどうか。年金も微々たる額でしょうし、また退職金もない職業ミュージシャンにとって、老後がどんな状況なのか、想像もつきません。

おっと、話が逸れてしまいました。
先のことは置いておいて、まずは現状。
まあ、以前ブログにも書いた、「納浩一はネガティブ発言が多い」という方とのやりとりの一件もありますので、あまりネガティブにはならないように気をつけて、話を進めたいと思います。
とはいえ、今現状を楽観的に見ているミュージシャンは、まずいないでしょうね。
どう考えても、皆が一様に「諦める時」が迫ってきているような危機感を、肌で感じていると思います。

佐久間さんは、ロックやポップス系のプロデューサーとしての立場から、まずその制作費の激減ぶりを嘆いていらっしゃいます。
でも実はジャズのフィールドでは、僕が90年くらいにジャズミュージシャンとして何とかやっていけるようになってきた頃から、CDの制作費用は、一枚100~200万なんて額でした。(一千万代なんて額をかけている人はまずい無かった。でもいまやその半分位の額になっていますが…)
ジャズの場合、CDを出してそれで儲かるような人は、ほんの一部のメジャーな人のみ。
ちなみに僕のデビューアルバム「三色の虹」は、自腹を切って500万円くらいかけて制作しましたが、最終的に売れた枚数は4000枚程度(これでも今から考えれば雲の上の数字。今は1000枚出ませんからね)。しかも原盤供給で、ある程度の名のあるレーベルから出しましたから、僕自身には一枚数百円程度しか返ってきていません。ということは簡単に見積もっても300万くらいの赤字だったでしょうか。
でも僕にとっては、何物にも代え難い経験でしたし、僕の人生にとっての最高の作品だと思っていますし、それを得るための300万円なんて安いもんだと思っています。

おっと、また話が逸れた。
まあ、いずれにしても、ほとんどのジャズのアルバムはそんな状況でしたし、それがそのまま今に至っているわけです。CDはあくまで名刺代わりでしか無かったわけです。しかも高額の。
ということは、ことジャズミュージシャンにとっては、CDを制作するという点に関してはあまり佐久間さんの言うところの「音楽を諦める時」というのは当たらないのかも知れません。

ではジャズのフィールドで感じる危機感とは?
それはやはり多くのジャズファンが、ジャズを聞きに来なくなった、ライブハウスに足を運ばなくなった、少なくとも日本人のプロの演奏にそれほど感心が無くなってきているということではないのかなと思います。
だって、アマチュアのビッグバンドはいま本当に盛況ですよね。サックスなんてどんどん売れているという話も聞きます。あるいはジャムセッションには多くのアマチュアジャズミュージシャンが参加して、本当に盛況です。プロのライブには閑古鳥が鳴いているのに、です。

ということで、ジャズは決して寂れてきているわけではないのだと思います。ただ見たり聴いたりする音楽から、自らトライし演奏して楽しむ音楽に、その有り様を変えてきたのだろうということかと思います。
そしてそのジャズの演奏を生業とする職業ミュージシャンは、その変化に自身がどう対応するかということが問われているんだろうと思います。

時代の変化と共に、もののありようが変わること、これはもう致し方ないこと。
昔は良かった的な発言を繰り返していても、少なくともその現場で利益を失っている当事者には何も良いことはありません。
この時代の変化にどう対応していくか、それが出来なければやはり「音楽を諦める時」が来るでしょうが、その変化にうまく対応できれば、60歳を過ぎた10年後も、自分は生き残っていられるのかなと思っていますし、そのためにも今からなんらかの手を打っていかないといけないと思う今日この頃です。

さて、ネガティブでしたか?

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